三田茂医師による新ヒバクシャの諸症状について動画

三田医院 岡山市医師会医学会 2011年フクシマ原発事故による放射能汚染、東京から避難移住した一開業医が 東日本、首都圏、さらに岡山の健康被害を考える 第1報 2019年2月25日
https://www.youtube.com/watch?v=xs_rWCbL4KI
こちらもご覧ください
下垂体機能低下症としての『能力減退症』 その症状と治療 一般向け版 第2報 2020年2月28日
https://youtu.be/cFtjWmKgiYQ
下垂体機能低下症としての『能力減退症』 その症状と治療 医家向け版 第2報 2020年2月28日 
https://youtu.be/m6NgV14vlKI
『新ヒバクシャ』の『能力減退症』 3年間の経過・治療・副作用について 第3報 2021年2月28日
https://youtu.be/8REHjTmJrhs
『新ヒバクシャ』の白血球数が減少している 2019年12月8日
https://youtu.be/q75kYFMwods 白血球減少について

内部被ばくを考える市民研究会 例会  2022年12月4日(日)13:30~16:30 三田茂医師を迎えて ツィキャスのみ配信(無料で視聴できます)  夜 質問コーナー(会員および三田医院受診者限定) Zoomのみ(事前申し込みの方)

(1)三田茂講演「2011年フクシマ原発事故による放射能汚染 東京から避難移住した一開業医が東日本、首都圏、さらに岡山の健康被害を考える 第5報
―2022年11月5日 岡山市医師会医学会発表講演を中心にー」
新ヒバクシャの「能力減退症」、新型コロナのワクチン接種による副反応、の諸症状とその治療実績についても話していただく予定です。
日時 2022年12月4日(日) 13:30~16:30
ツイキャス http://twitcasting.tv/naibuhibakushim/show/
会員および事前申し込みの方はZoomでも参加できます。

(2)三田茂先生への質問会
日時 2022年12月4日(日) 20:00~22:00
Zoomのみ 事前申し込みのあった方のみ。会員以外の方は氏名、住所等の申し込みが必要です。三田医院を受診された方のみが実名で参加できます。

会員の方、および事前申し込みの方はZoomでも参加できます。視聴、Zoom参加される方はカンパ1000円程度をよろしくお願いいたします。

※ 事前申し込み(カンパもよろしくお願いします)
  内部被ばくを考える市民研究会事務局
  E-mail entry.naibu@gmail.com まで

(1)お名前
(2)メールアドレス
(3)住所
(4)お電話番号
(5)三田先生への質問
をお書きの上、お申し込み下さい。

振込先:内部被ばくを考える市民研究会
ゆうちょ銀行からの場合
ゆうちょ銀行 記号 10370 番号73181351

ゆうちょ銀行以外の金融機関からの場合
ゆうちょ銀行 店名 〇三八(読み方 ゼロサンハチ) 普)7318135

※上記口座にてカンパ金も受け付けています。
 カンパ金をお振込いただく際は、メールにてお名前・振込日・振込金額をお知らせください。

三田医院ホームページより
被曝対応
http://mitaiin.com/?page_id=10

2011年3.11の福島原子力発電所事故による、首都圏、東日本住民の被曝への懸念に対応します
甲状腺超音波検査、血液検査などを行います
一般診療時間外(午後)に予約制で行います
予約を電話で受け付けています 

★ 下記 下垂体機能、副腎機能検査(採血)は早朝空腹安静時の特殊採血が必要です
午後の検査では行なえませんので 希望の方は電話予約時にその旨お伝え下さい
8時30分 から 13時 にお電話ください   
☎ 086-272-7770
              
検査結果は検査日の翌々日(診療日)以降に説明します
    
年末年始・春夏休み・ゴールデンウイークは
遠方の方々が来やすいよう考えて検査センターとも調整して検査をしていますが
早めに予約して直前にキャンセルする人が増えています
そのために予約できずに諦める人がいることを忘れないでください
突然の発病、発熱は仕方ありませんが、最低1週間以上前には連絡をお願いします

* 小児、児童 と 異常や症状のない大人は 保険の適応がない場合があります
* 乳幼児は白血球の異常がみられることがしばしばあります
* 白血球の異常は大人にも見られるようになってきました(2017年9月記)
* 30から50歳(お父さん、お母さん)には甲状腺エコーの異常が増えています
福島県では小児ではなく青年の甲状腺癌が多発しています
チエルノブイリでは子どもの甲状腺癌よりも大人のほうが多かったのです
超音波検査のみも可能です(6,000)
一度も検査を受けていない方はぜひいちどは受けてください
* 高齢者も具合の悪い人が徐々に出てきています ご家族皆さんの検査を勧めます
* 腎機能検査(Crtn.)の変動が気になり始めました(2016年10月記)
* 記憶力の低下、眠気、意欲の低下など で困っている人が増えてきた印象です
  間脳、下垂体機能の低下、あるいは副腎機能の低下を疑い始めています(2017年5月記)
  これらの症状の多くは治療(クスリの内服)で改善することも確認しています(2018年1月記)
  動画を作成しました  『能力減退症』について  参考にしてください
三田医院 岡山市医師会医学会 2011年フクシマ原発事故による放射能汚染、東京から避難移住した一開業医が 東日本、首都圏、さらに岡山の健康被害を考える 第1報 2019年2月25日
https://www.youtube.com/watch?v=xs_rWCbL4KI
こちらもご覧ください
下垂体機能低下症としての『能力減退症』 その症状と治療 一般向け版 第2報 2020年2月28日
https://youtu.be/cFtjWmKgiYQ
下垂体機能低下症としての『能力減退症』 その症状と治療 医家向け版 第2報 2020年2月28日 
https://youtu.be/m6NgV14vlKI
『新ヒバクシャ』の『能力減退症』 3年間の経過・治療・副作用について 第3報 2021年2月28日
https://youtu.be/8REHjTmJrhs
『新ヒバクシャ』の白血球数が減少している 2019年12月8日
https://youtu.be/q75kYFMwods 白血球減少について

* 原因のよくわからない肝機能異常(軽度の肝炎?)が少数ですが見られるようになっています  特に成人女性に多いようです (2019年1月記)

『新ヒバクシャ』の『能力減退症』
https://www.radiationexposuresociety.com/archives/8314

物忘れがひどくて、疲れやすい。最近ふえている「能力減退症」とはどんな病いか
4000人を診察した医師からの警告 2018年4月16日 文春オンライン 三田茂
https://bunshun.jp/articles/-/6958

避難、保養に関しては こちら も参考にしてください
増える岡山への移住相談…現状は? KSB瀬戸内海放送 2014年5月21日
https://www.youtube.com/watch?v=Fvp-bE_k_Lk

東京から岡山へ移住した一開業医の危機感 三田茂 2015年10月
https://nowar.radiationexposuresociety.com/2022/11/24/%e6%9d%b1%e4%ba%ac%e3%81%8b%e3%82%89%e5%b2%a1%e5%b1%b1%e3%81%b8%e7%a7%bb%e4%bd%8f%e3%81%97%e3%81%9f%e4%b8%80%e9%96%8b%e6%a5%ad%e5%8c%bb%e3%81%ae%e5%8d%b1%e6%a9%9f%e6%84%9f%e3%80%80%e3%80%80%e3%80%80/

※ 内部被ばくを考える市民研究会の例会は、基本的に毎月1回、日曜日に開催しています。以下、ツイキャスをご覧下さい。会員の方はZoomでも視聴できます。

ぜひ、ツィキャスをご覧下さい。過去の録画も視聴できます。

ツイキャス http://twitcasting.tv/naibuhibakushim/show/

東京から岡山へ移住した一開業医の危機感      三田 茂   三田医院院長 2015年10月

東京から岡山へ移住した一開業医の危機感      三田 茂   三田医院院長
岡山の雑誌「人権21・調査と研究」2015年10月号に寄稿しました

2011年3月11日 午前の外来診療を終え、午後に向けての準備中に地震は始まりました。  以前より東京では地震は全く日常茶飯事で、震度3位はあたり前、しかしこのときは違いました。  振幅は次第に大きく長周期となり、経験したことの無い揺れかたとなりました。
「これが遠く離れた大地震による長周期地震動だな。いよいよ東南海大地震。となると浜岡原発(静岡)のメルトダウンによって東京は放射能汚染されるのかな。」と瞬間的に考えましたが、震源は東北でした。  東京電力フクシマ第一原子力発電所の原子炉群の温度は上昇し、なすすべも無く大爆発、メルトダウン。  東日本は広域にわたり放射能汚染されてしまいました。
じつは東京も高度に汚染されていて、その土壌の放射線量は現在被害に苦しむチェルノブイリ周辺の都市よりも高いのです。

父が東京都小平市に三田医院を開業したのは1963年、私が3歳のときでした。
患者さんたちは小さいときから私を跡継ぎとして期待しましたから、医師になる以外に選択はありませんでした。
 父は長年小平市医師会の副会長を務め、そのため私も世襲的に医師会理事をしてきました。
 市町村医師会の仕事は、学校医、健康診断、予防注射、時間外診療、救急体制、介護保険審査など、ほとんどボランティア的なもので理事のなり手は少ないのです。  
なかでも近い将来予測される東南海地震、首都直下地震の対策が全く不充分であることが気になり、私は災害対策担当理事として活動してきました。
地震について勉強すると、東京にとっての重大な脅威は周囲の原発の事故であることが次第に分かりました。
担当理事として行政、保健所などと交渉しましたが、原発事故に対応する意欲は全く見られず、これは、行政の「地域防災計画」によるもの、つまり国の方針に沿ったものであることが分かりました。  じっさい、今回の原発事故に対して行政はするべきことをせず全くの役立たずですが、この「地域防災計画」の「目的」が、地震、風水害に対しては「都民の健康、生命、財産を守る」とあるのに、原子力災害にたいしては「都民の不要な混乱を防止する」となっていて、これが役人の行為の拠りどころとなっているのです。 (国の方針に沿っていると言う点で岡山の地域防災計画も同じ程度のものです。 一度確認しておくことをおすすめします。)

被曝を心配する多くの親子が首都圏から遠路はるばる岡山の当院に受診しますが、その理由は首都圏で被曝の心配に対応してくれる医師が皆無!だからです。
病院に行って放射能被曝の懸念を口にすると、バカにされる、怒られる、睨みつけられる。
いつも優しかったかかりつけ医の顔色が瞬間的にかわって、「母親がしっかりしないから子どもの具合が悪いのだ」と延々説教される。
でも首都圏の子どもの具合は悪いのです。
母親たちは罵倒されて打ちのめされて疲れ果てて、岡山へ来て涙ながらに心配を訴えるのです。
放射能事故の健康被害には医学の教科書はありません。
 放射線医学は外照射やクリーンでコントロールされた放射性物質を扱っていて、放射能汚染については無力です。
 診断学や治療学もありません。
 じつは医師にとっては未知の分野、いちばんかかわりたくない分野です。
 しかしこのような事態になってしまったからには仕方ありません。地域医療を担う一開業医として市民の健康被害を防ぐために尽力することはあたりまえですから、人一倍勉強して啓蒙せねばなりません。  行政のやり方では市民を守れません。そもそも医師は一般の人達よりもずっと放射線に近いところにいます。 
 少なくとも父や私の指導医達は患者さん第一主義でしたから、仲間の臨床医達はみなそのように行動すると思いましたが、そうではありませんでした。医師仲間の自発性のなさと不勉強には失望しました。  地域の子ども達を預かる教師たちはなぜ平気でいられるのでしょう。

 チェルノブイリ事故からそろそろ30年経ちます。
 彼の地では本来みられないはずの乳幼児の甲状腺癌が発生したことをWHO(世界保健機関)やIAEA(国際原子力委員会)も認め、その原因は放射性ヨウ素によるものとされています。
 当院にも被曝の影響を 心配する親子が超音波検査を受けに来ます。
 事故当時18歳以下の人達が対象の福島県民健康調査では「子ども」の甲状腺癌が「多い、いや多くない」と騒いでいますが、そもそも医学的には「子ども」という分類はありません。
 14歳以下が「小児」、15~19歳が「青年」、20歳以上は「成人」です。
 当院で首都圏の家族の甲状腺検査をしてきた印象では、「子ども」が心配と言って連れてこられる低年齢の子ども「小児」には甲状腺疾患はなく、その親「成人」に甲状腺癌が増えています. チェルノブイリでは、本来無いはずの「小児甲状腺癌」が発生しました。
 やや遅れて「成人」の甲状腺癌は大幅に増加しました。フクシマでは、「小児甲状腺癌」は今のところ発生していません。
 「青年」の甲状腺癌は著明に増加しています。
 「成人」は検査をしていないので不明です。
発生のパターンがチェルノブイリとは違っています。
日本では放射性ヨウ素は原因ではないのかもしれません。
首都圏では、このような調査は始まってもいませんが、私の印象では「成人」の甲状腺癌は増えていると思います。
 フクシマ事故による東日本の甲状腺癌の現時点でのハイリスクグループは「青年」「成人」であって、「小児」ではありません。
 行政に働きかけたり基金を募って小学生以下の「こども」の超音波検査をして達成感を味わっている場合ではありません。 検査をするのなら「青年」「成人」優先であるべきです。
 本当は避難、保養が最優先と思いますが…

 放射線に係わる医療者や原子力施設の作業員は定期的に「電離放射線健診」を受けるように法律で定められています。
 放射線管理区域並みの環境が点在する首都圏の人達はこの健診並みの検査を受けるべきです。
 私は2011年末より約3000人の首都圏の親子の血液検査もしてきました。
 「電離健診」の中心は血液検査だからです。
 当院ではまだ白血病などの血液疾患は見つかっていませんが、首都圏の小児にはすでに検査値の偏りがみられ、これは西日本への避難、保養で改善するのです。 呼吸器、消化器、循環器、皮膚病などのありふれた病気にかかりやすく、治しにくく、再発、重症化しやすくなってきました。
 これらも避難、保養で急速に改善します。 喘息、下痢、中耳炎、副鼻腔炎など、特に皮膚炎の改善は驚くほどです。
 診断のつかない病気、治療に反応しない状態、病気とまではいえないような「気のせい」と言われてしまうような調子不良。  首都圏の電車は「病人救護」のため頻繁にとまります。
 東京では手足口病などの小児特有の病気にかかる大人が増え、インフルエンザは小児より成人のほうが多いのです。
 40歳過ぎの健康だった友人は白血球数が低下し、普通は免疫力が低下した人しかかからない真菌性肺炎(カビ)で入院しました。
 このような状態をソ連ではチェルノブイリエイズと言ったのです。
 癌が増えることのみを統計では問題としがちですが、むしろこのような不健康な人々の増加による社会の混乱、能力低下を危惧します。
さらに次世代、将来の世代の遺伝子的負荷も非常に心配です。 
東京よりも土壌汚染の低いチェルノブイリの都市では第2第3世代の不健康な状態、人口減少が大きな社会問題になっているからです。

チェルノブイリ事故では首都モスクワは被曝を免れましたが、フクシマ事故ではトーキョーがすっかり汚染されてしまいました。
日本における最大の問題は、人々が被曝している事実を認めたくないことです。
ほとんどのメディアは本社が東京にありこのことを発信しません。
東京の三田医院には、テレビも新聞も週刊誌も映画も取材に来ましたが、記事になったことは一度もありません。
彼らが欲しいのはフクシマがかわいそうだという話で、トーキョーが危ないという話ではないのですね。
当事者は往々にして理性的な判断ができず、残念ながらトーキョーは当事者そのものです。
避難、移住を呼びかける私がトーキョーに住み続けることは矛盾していました。
三田医院が岡山へ移転したことで避難、移住を決意した人も多く、こちらへ来ることで始めてわかる事も多いのです。
西日本、外国ではテレビ、新聞取材が当たり前のように全て記事になりました。
トーキョーにいては全てかき消されてしまう。
これから私は西日本から首都圏へ警告を発し続けようと思っています。

広島黒い雨判決の意義―原爆訴訟を俯瞰するー矢ヶ﨑克馬

pdf 広島黒い雨高裁判決の意義 原爆訴訟を俯瞰する 2022年9月18日 矢ヶ﨑克馬

(1) 現実と科学を無視した虚偽による差別の根源
米国核戦略:「爆心地に放射性降下物は無く、内部被曝は無い」。 「知られざる核戦争」(矢ヶ﨑命名)は戦後一貫した「核(兵器と原発)による被曝被害を隠蔽する似而非科学を母体とする虚偽情報操作を言う。UNSCEAR, ICRP, IAEA等の国際原子力ロビーにより未だに支配的情報統制を行っている。
「知られざる核戦争」による犠牲は内部被曝による被爆被災者が第一号。
その手段は
① 被爆指定地域を外部被曝だけで設定(内部被曝を排除)
② 被爆被害者の支援制度の差別化
<1>被爆者、
<2>第一種健康診断受診者、
<3>第二種健康診断受診者

知られざる核戦争と原爆被爆者 矢ヶ﨑克馬

 「知られざる核戦争」は国の基準から内部被曝を排除する似而非科学で固められた強固な地盤を保有する(国の言う「科学的/合理的根拠」。 その具体的内部被曝排除の手段は、①砂漠モデル、②Glasstoneの体系、③基本墾、④DS86、⑤国連報告、⑥黒い雨に関する専門家会議、等々。
 これらのほとんど全ては、矢ヶ﨑が黒い雨訴訟に際して、現場証拠として残された原子雲の写真、動画の徹底分析により、誤謬であることが明確になった(田村和之+竹森雅泰編『(仮題)原爆「黒い雨」訴訟』(山吹書店)予定を参照されたい)

(2) 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の被爆者定義

原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律

 被爆者には4つのカテゴリーがあるが、第一の被爆地域および第二の入市被爆者の地域設定が内部被曝を排除して外部被曝だけで決められている。
第3の「救護被爆」の定義が事実上被爆者の定義として用いられている。

(3) 差別を前提とした「被爆者支援制度」の実際
 被爆被害者の支援制度は
 <1>被爆者、
 <2>第一種健康診断受診者、
 <3>第二種健康診断受診者
の3区分を為す。 実際の原爆被災者の健康被害を反映して特例を設けて「特別扱い」をし、線引きせざるを得なかった。「内部被曝は無い」ことを前提とした差別体系である。現実に原爆被災者を襲った「内部被曝」を認めないが為に、さらに偏見差別を助長せざるを得なかったのである。
3種類の差別が出そろっているのは長崎である。広島には第二種健康診断受診者特例区は無い。
長崎における被爆地域、健康診断受診者特例区域

長崎 被爆地域

 図に示した赤い円は半径12kmの爆心地を中心とする円である。

 矢ヶ﨑の原子雲の解析結果は「上空4km以下の高さに展開する水平に広がる円形原子雲の広さとほぼ一致している。この同心円が、放射能環境が形成された地域なのである。
 ① 被爆地域

 被爆地域は半径2km(初期放射線が健康被害を及ぼすとした爆心地中心の円)を描いてその部分を含む行政区全体を被爆地域とした。この区域内で被曝した者は全員被爆者とされる。

② 第一種健康診断受診者

 非常に限定された線引きである。半径5kmを含む行政区。
 原爆投下時に、広島では、放射線を帯びた「黒い雨」が降ったとされる法令で定めた区域(宇田強雨域)内にあった者とその胎児、長崎では被害実情の一部を反映した地域指定。
 第一種健康診断受診者証を交付された者は、特定の疾病の状態にあると認められた場合被爆者健康手帳へ切り替えができる。
特定の疾患
<1>造血機能障害(再生不良性貧血、鉄欠乏性貧血など)
<2>肝臓機能障害(肝硬など) <3>細胞増殖機能障害(悪性新生物、骨髄性白血病など)
<4>内分泌腺機能障害(糖尿病、甲状腺の疾患など)
<5>脳血管障害(脳出血、くも膜下出血、脳梗塞など) <6>循環器機能障害(高血圧性心疾患、慢性虚血性心疾患) <7>腎臓機能障害(慢性腎炎、ネフローゼ症候群など) <8>水晶体混濁による視機能障害(白内障) <9>呼吸器機能障害(肺気腫、慢性間質性肺炎など)
<10>運動器機能障害(変形性関節症、変形性脊椎症、骨粗鬆症 など) <11>潰瘍による消化器機能障害(胃潰瘍、十二指腸潰瘍など)

③ 第二種健康診断受診者
 線引きが現実に合わないから、広島では広範囲「黒い雨」降雨域の、長崎では「被爆地域見直し」として適用範囲の拡大要求が必然的に現れた。長崎では「第二種健康診断受診者」制度が作られた。長崎被爆体験者である。

 原爆投下時に、長崎の爆心地から12キロメートル以内の法令で定めた区域にあった者とその胎児
 特徴は「第一種」と異なり、被爆者健康手帳への切り替え制度はないことともう一つ、重大な「国家による偏見差別」があることである。 (医療費給付)について次のような規定がある。
<疾病原因を精神の病(精神的ストレス)とされること>
 「第二種健康診断受診者証をお持ちのかたで、現在も長崎県内にお住まいのかた(胎児を除く)は、被爆体験による精神的要因に基づく健康影響に関連する特定の精神疾患(これに合併する身体化症状や心身症を含む)が認められる場合、医療費の給付が受けられる制度の対象となります」(長崎市HP)。
 第二種健診受診者の医療手当資格には「精神神経科あるいは心療内科の通院証明」が必要なのである。 これは「ハンセン氏病」に対する国差別が法制化されていたことと同様な、国による偏見差別の法制化である。
 二重の差別を受けた集団である。旧ハンセン氏病患者と同様な「国家が謝罪すべき不当な偏見を強制されてきた人々なのだ。
 さらに、
 第二種健康診断受診者(被爆体験者)の治療費支給対象となる疾病群からは「がん」が排除されているため(第1種健康診断受診者に対しては上記11種疾病が適用され明確にがんが含まれている)、被爆体験者に最も深刻ながんが発生すれば、その個人が今まで支給されてきた医療費支給が停止される、という極めて残酷な取り扱いを受ける。精神疾患からはがんは発生しないというのである。
  許し難い「人道破壊」の差別制度である。
 「被爆体験者(第二種健康診断受診特例者)」の名称の由来は、「あなたは原爆の被爆を受けていません。『被爆したのでは無いかとと思う』『精神的ストレス』があなたの健康を害しているのです」というものである。これが「知られざる核戦争」の被害者最前線なのである。

広島における雨域と被曝指定区域および第一種健康診断特例区域

広島の地域指定

 左図の右下の細点で示した地域が被曝指定区域、左上の斜線で指定された区域が第一種健康診断特例区域である。この区域は右図の赤線で示される宇田強雨域である。ここで増田雨域は群青色、大瀧雨域は青色の線で示されている。

(4) 広島の原子雲
 核分裂の行われた「火球」内で生成し、火球内に存在した放射性物質がどのようにして直径30km 程の広域に運ばれたか?その自然科学的機序は?
 それは上空4km以下程度(逆転層)に広がる水平な円形原子雲による。
 原子雲は高温気塊(元火球)の浮力により形成され発展した。きのこ雲の頭部および中心軸には放射能が充満しているが、逆転層に展開する水平原子雲には中心軸の放射性物質が移行する。直径30km程度の範囲に放射能がもたらされた科学的根拠である。   
 この水平原子雲は放射能を強烈に含むため、電離による電荷生成が水滴、雨滴の形成を激しく行う。通常の雨が、雲の上昇による気温低下により、飽和蒸気圧温度以下になることを必要としているが、放射能に満ちた水平に広がる原子雲はその場にいるだけで、放射線による被ばくで水滴を生じるのだ。
  即ち雲内の温度を降下させる必要は無い。比較的薄い雲でも、放射能が十分に供給されれば降雨が発生する。放射能の電離により水滴および雨滴を生じて雨を降らす。水平に広がる原子雲が降雨をもたらす科学的根拠である。
 さらに放射性微粒子の構造は乱雑な原子配置をしているために光を吸収し黒い微粒子となる。黒い雨の放射能原因の「黒」が科学的に保障される。
 広域に放射能を運び、黒い雨を降らせたのは約4km程の上空の逆転層に広がる水平原子雲なのである。
 下図は原爆投下後約1時間で撮影された原子雲である。

火球内の放射性物質を直径30kmにまで運んだのは水平に広がる円形原子雲

 図中赤丸で示す位置が爆心地であり、爆心地から北西にきのこ雲が約9km移動している。きのこ雲を中心として左半分には頭部の影を映した円形水平原子雲が明瞭に見える、右手奥側には円形原子雲が見える。右手手前の部分は南西の方向であり、自然風との相互作用で水平に広がる原子雲が乱れているが、全体として水平に広がる原子雲が確認出来る。
 この雲の直径は約30kmであり、大枠として降雨がほぼ一時間後から始る増田雨域、大瀧雨域の大きさと一致している。直径30km程の空間が放射能空間を形成しており、水平原子雲が移動するとともに雨域も移動している。水平原子雲には放射能が充満する必然性があり放射能空間を形成する。その雲が降らす黒い雨は放射能領域を大雑把に示すものである。

5) 砂漠モデルーー爆心地には放射能は無い

砂漠モデル

 湿度の極端に少ない砂漠では原子雲はいったん出現するが直ぐ解消する。
 放射性微粒子は水と合体すること無く単独の微粒子のままでいる。その時微粒子の落下速度は毎秒1mm程度の低速度である(ストークスの法則)。自然風の早さが毎秒1m程度ならば、微粒子は横へ1m運ばれる間にわずか1mm程度しか落下しない。従って爆心地には全く放射性微粒子は落下しない。
 これは高湿度空間中で爆発し、放射性微粒子が水滴との合体を果した広島・長崎の気象現象とあいまった物理現象(水平の円形原子雲の形成等)とは全く異なる。
 しかし、これが放射性物質が爆心地には無いことの普遍的科学的説明とされ、米核戦略(知られざる核戦争)の柱となった。この放射性微粒子の降下機序を矢ヶ﨑は「砂漠モデル」と呼ぶ。広島長崎に砂漠モデルは適用出来ない。
 さらに爆心地には放射性降下物が無かった「現場証拠」として原爆線量評価体系「DS86」の第6章「放射性降下物」が日米の合作として提示された。しかし、ここで用いられているデータの全てが枕崎台風の後で一斉に測定されたものであることを矢ヶ﨑が暴露した(広島では「床上1mの濁流」の大洪水、長崎では記録的大雨があった)(「隠された被爆」(新日本出版))。
  DS86には濁流で洗われた後の放射性物質量を風雨の影響が無く「初めからこれだけしか無かった」ものとし、「健康に影響する放射性降下物は初めから無かった」としたのである。

(6) 広島黒い雨判決の意義
 1審判決は従来被災者を分断差別化する枠組みの中での判決であった。即ち「法定の11種類の疾病に罹っているので被爆者である」ことが判決の柱であった。この枠組みは従来の法的枠組み(被爆行政の組み立て原理)をいささかも変更していない。
 しかし高等裁判所、控訴審の判決は従来の科学的虚偽を否定し、内部被曝を全面的に認め、放射能が広域に分散される科学的機序を認め、黒い雨に打たれることだけは無くその領域にいることによって内部被曝をする必然性があったとしたのである。矢ヶ﨑の主張がそのまま判決に表された感があった。
 国の「科学的/合理的」根拠に対して明快で正直な科学的判断をし、援護法の精神に則って、被爆被害者の実態を誠実に評価したのである。
 判決史に残る名判決である(西井和徒裁判長)。
 国は上告せずに高裁判決を最終判決とした(国は、法的には高裁判決を「是」としたので在る)。しかし、卑劣なことに国が示した審査の基準は一審レベルに戻り、「法定11疾病に罹患すること」「実際に黒い雨に打たれたこと」としている。新たな差別と分断を招く「基準」であり、三権分立の原則を持つ立憲民主主義を踏み砕く暴挙である。

広島黒い雨裁判判決の意義

(7) 原爆裁判と内部被曝の歴史

 法廷で「内部被曝」が初めて主張されたのは2003年の「原爆症認定集団訴訟」である。
 この時、矢ヶ﨑は
①DS86第6章の放射性降下物データは、「床上1mの濁流で爆心地周辺が洗われた後のデータ」であることを暴露し、
②内部被曝は外部被曝より深刻な健康被害をもたらすことを主張した。
 17地裁全部で勝訴を勝ち取ったがとりわけ熊本地裁では明確に「内部被曝」の機序を認めた。
 その後特記すべきは広島地裁に於いて「3号被爆者の健康手帳取得」に関する裁判であった。救護所内の内部被曝の機序を明確に認め全員勝訴を勝ち取った(野々上友之裁判長)。
 長崎被爆体験者訴訟では、広島黒い雨と同様な主張を矢ヶ﨑は法廷で行ったが、完全敗訴を喫した。裁判官の特徴的姿勢は、矢ヶ﨑にレッテル張り『完全な反ICRP派である』を行い、矢ヶ﨑の主張を取り扱わない口実とした。
 裁判所が国際原子力ロビーの体制派に与して、権力側の立場をそのまま裁判に持ち込んでいるのである。
 司法にあるまじき姿勢であり、裁判所の自殺行為である。
 これに対し、広島黒い雨裁判で示した裁判官の姿勢は人道的にも科学的にも「事実を探究する司法の原則的気概」に貫かれていた。

原爆訴訟と内部被曝(主たるもの矢ヶ﨑)

2022年9月18日

講演資料 『黒い雨』訴訟と新ヒバクシャ援護法 小山美砂さん 毎日新聞大阪社会部記者9月18日(日)13:30~15:30

小山美砂『「黒い雨」裁判』集英社新書2022年7月20日

9月18日 小山美砂オンライン講演会にご参加のみなさま

 本日の講師のスライド、および、関係資料です。

2022年9月18日 内部被ばくを考える市民研究会 オンライン講演会 小山美砂 スライド

原爆被爆者対策基本問題懇談会意見報告(概要) 厚生大臣の私的諮問機関 1980年12月11日

「黒い雨」訴訟 意見書 広島黒い雨の特性について 琉球大学名誉教授 矢ヶ崎克馬 2017年11月29日

「2021岡山市医師会医学会発表  「2011年フクシマ原発事故による放射能汚染、東京から避難移住した一開業医が東日本、首都圏、さらに岡山の健康被害を考える 第4報」  県民健康調査vs『新ヒバクシャ』」youtube動画 14分34秒

 内部被ばくを考える市民研究会事務局

内部被ばくを考える市民研究会 例会 小山美砂さんを迎えて 9月18日(日)13:30~15:30 ツィキャス

ツイキャス http://twitcasting.tv/naibuhibakushim/show/

講演 『黒い雨』訴訟と新ヒバクシャ援護法 小山美砂さん 毎日新聞大阪社会部記者9月18日(日)13:30~15:30 ツィキャス
事前、お申し込みの方はZoomでも視聴できます。


 2021年7月14日広島高裁は、「黒い雨」を浴びた原告84人全員を被爆者として認めた前年の広島地裁判決を認め、国の控訴を棄却しました。同年7月26日菅政権は、「84人の原告の皆さんについて、被爆者援護法に基づき、その理念に立ち返る中で救済するべきだと考えました」との首相の政治判断を示し、最高裁への上告を断念しました。

 小山美砂さんは、毎日新聞の広島支局の記者として2018年から「黒い雨」訴訟の担当となり、この「黒い雨」訴訟の原告の被爆者とともに取材を続けてきました。2022年7月20日に集英社新書から「『黒い雨』訴訟」を出版しました。

小山美砂『「黒い雨」裁判』集英社新書2022年7月20日

 序章 終わらない戦後 に小山美砂さんはこう書いています。

「なぜ、黒い雨被爆者は戦後75年余りも間、置き去りにされてきたのか。そこには、被ばくの影響を訴える声を『切り捨てる』論理があった。これに異議を唱え、被ばくを巡る救済のあり方を問うたのが、『黒い雨』訴訟だった。黒い雨被爆者がなぜ、どのように切り捨てられ、そして何を訴えて援護を勝ち得たのか。本書は、黒い雨被爆者が『切り捨てられてきた』戦後を記録した、初めてのノンフィクションである。その記録は長崎で、福島で、そして世界中で今も置き去りにされている放射線による被害者を救う道しるべになると確信している。」

 裁判の中で、「黒い雨」を浴びた人々が爆心地近くで被ばくした人々と同様に、原爆症を発症していたことが明らかになっています。原子物理学者で反原発を唱えていた、水戸巌氏の言葉を借りて、「外部被ばくは、機関銃を外から撃たれたようなもので、一過性。だが、内部被ばくは体の中に機関銃を抱えて、内部から絶えず弾丸を打ち出されているようなものだ」と紹介しています。この訴訟が、福島第一原発事故への影響を恐れた厚生労働省の田村憲久大臣は「空気中の浮遊していた放射性微粒子を吸い込む、もしくは食物、飲料水などから体の中に入れる場合、放射線量に限らず、そういう(健康影響を与える)可能性がある、ということが(判決文)に書かれている」と発言したことも紹介されています。この小山美砂さんの「『黒い雨』訴訟」は、内部被ばくの教科書として読めると思います。

 「100ミリシーベルト以上の放射線を浴びた場合は病気を発症するが、それ未満の放射線ならば放射線によって発症することはない」という「100ミリシーベルト閾値論」を国は主張してきました。「100ミリシーベルト閾値論」の根拠は、寿命調査と呼ばれる広島・長崎の被爆者生存追跡データです。しかし、この寿命調査は、初期放射線に対する評価であって、黒い雨で問題となる残留放射線の影響は排除されています。広島地裁判決では、この「100ミリシーベルト閾値論」を取らず、原告それぞれが「身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような状況にあった者」と言えるか否か検討した、と書かれています。
 まさに、東電福島第一原発事故の放射能を受けてしまった、私たち新ヒバクシャは、この「放射能の影響を受けるような状況にあった者」ではないでしょうか。

 序章に原告3人の方が紹介されています。その健康被害とは

① 川本妙子さん。原爆投下当時3歳。23歳の時に甲状腺機能低下症。その後、糖尿病、骨髄異形成症候群(白血病の前段階と言われる)、68歳、72歳で脳梗塞。

② 斉藤徹磨さん。原爆投下当時13歳。30歳過ぎてから体調を崩しがちになり、高血圧、白内障、糖尿病、心臓弁膜症、高脂血症。

③ 高東征二さん。原爆投下当時3歳。投下当時自宅の中にいた。見上げた空の色が、赤、黄、青、緑と色を変えた。チリや灰が降ってきたことを記憶している。しかし、その後の記憶がない。比較的健康で、雨に濡れた記憶もない。しかし、運動の過程で知り合った研究者からは、「チリや灰など、放射性微粒子が浮遊する空間にいたのだから被ばくしています」と言われている。高血圧を発症し、2019年、74歳の時に脳梗塞で入院。その後、不整脈、心房細動のカテーテルアブレーション治療を受けた。

 原発事故からまだ、11年。川本さんが発症したのは20年後、斉藤さんが発症したのは17年後、高東さんが発症したのは71年後。私たち新ヒバクシャが、自分の健康被害と向き合うのは、これからではないでしょうか。黒い雨被爆者の現在は私たちの未来かもしれません。自らの問題として、この「黒い雨」訴訟を学びたいと思います。

 事前申し込みいただいた方には、Zoom案内をお送りします。
以下、事務局宛て、お名前とZ0om参加のメールアドレスをお送り下さい。折り返し、参加Zoom urlをお送りします。


申し込み 内部被ばくを考える市民研究会事務局
E-mail entry.naibu@gmail.com まで
事前申し込みは9月18日12:00までです。

 本、小山美砂さん講演会にカンパをお願いいたします。お一人1000円程度のカンパをいただけるとありがたいです。

振込先:内部被ばくを考える市民研究会

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ゆうちょ銀行 記号 10370 番号73181351

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「黒い雨」不安一掃を重視 広島高裁判決、発症前でも救済に道開く

深掘り 金秀蓮 中山敦貴 小山美砂 芝村侑美

2021年7月14日 毎日新聞 

「黒い雨」の体験者への被爆者健康手帳の交付を求めた訴訟の控訴審判決を前に、広島高裁に向かう原告団=広島市中区で2021年7月14日午後2時14分、山田尚弘撮影
「黒い雨」の体験者への被爆者健康手帳の交付を求めた訴訟の控訴審判決を前に、広島高裁に向かう原告団=広島市中区で2021年7月14日午後2時14分、山田尚弘撮影

 「黒い雨」を巡る14日の広島高裁判決は、再び住民全員を被爆者と認めた。放射線の影響への不安を一掃するという被爆者援護法の理念を重視し、病気の発症前でも被爆者と認める新たな枠組みを示した。「科学的裏付け」にこだわってきた国の姿勢が否定された形だが、今回の司法判断は早期救済に結びつくのか。

 「被爆者援護行政の根本的な見直しを迫る画期的な判決だ」。閉廷後、原告側の竹森雅泰弁護士が声明を読み上げると、集まった原告や支援者から拍手が起こった。

 最大の争点となったのは、原告らが被爆者援護法の「3号被爆者」といえるかどうかだ。同法では「原爆放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」と定め、直接被爆(1号被爆者)や原爆投下後2週間以内に爆心地近くに行った入市被爆(2号被爆者)などと区別している。

「黒い雨」と国の援護対象区域
「黒い雨」と国の援護対象区域

 1審・広島地裁判決は、この規定を「健康被害を生じる可能性」があったかどうかで判断すべきだと解釈したが、高裁判決は「健康被害を否定することができない事情があれば足りる」として、認定のハードルを一段下げた。

 救済の枠組みも1審判決より踏み込んだ。

 国は1976年、終戦直後の気象台調査に基づき、大雨が降ったとされる地域を黒い雨の援護区域に指定。この区域にいた人は無料で健康診断が受けられ、国が「放射線の影響が否定できない」と定める造血機能障害など11種類の疾患を発症すれば「被爆者」とみなされ、被爆者健康手帳を受け取れる。

 1審判決はこの仕組みを準用し、区域外であっても黒い雨に遭い、11疾患を発症すれば被爆者と認める判断基準を示した。

 高裁判決は、健康被害が顕在化していない住民も援護対象とする法の趣旨を踏まえ、11疾患を発症していなくても被爆者と認定する枠組みを提示。さらに多くの黒い雨体験者が救済される道を切り開いた。

 黒い雨を巡っては、広島市や広島県などが長年にわたって区域拡大を求めてきた。しかし、国は80年に厚相(当時)の諮問機関が出した「被爆地域の指定は科学的・合理的根拠のある場合に限定して行うべきだ」との報告書を盾に否定し続けてきた。

「黒い雨」訴訟・控訴審の主な争点
「黒い雨」訴訟・控訴審の主な争点

 今回の訴訟でも国は被爆者認定に「高度な立証」を求めたが、高裁判決は「認定を否定するためでなく、被爆者と認めるために科学的知見を活用すべきだ」と厳しく批判した。

 科学的知見を巡って争点となったのが、黒い雨による健康被害があるかどうかだ。

<中略>

 1審判決後に体調を悪化させて入院した原告も少なくなく、県と市は訴訟や検討会の結論を待たない早期の救済を求めている。共に原告として闘った姉を2018年に亡くした原告の広谷倉三さん(79)は、「国は、被害を否定しようと意地になっとる。わしらもあと何年生きられるかわからず、先がない。一刻も早く『被爆者』と認めてほしい」と訴えた。

 ただ、国にとって「科学的な根拠がない」として控訴した1審判決を踏襲する広島高裁判決は受け入れ難い。厚労省幹部は「控訴した理由を考えれば、上告を視野に検討することになるだろう。だが、県と市がどのような方針か分からず、今後について協議して対応したい」と話す。衆院選が間近に迫っており、ある省庁幹部は「上告を断念し、原告を救済する政治的判断はあるかもしれない」と指摘する。上告期限の28日まで検討を重ねる方針だ。【金秀蓮、小山美砂】

長崎の「被爆体験者」にも光

 国による援護対象区域の線引きを巡っては、長崎でも区域外にいたため被爆者と認められない「被爆体験者」が、広島と同様の訴訟を相次いで起こしている。最高裁で敗訴が確定したが、一部の原告は再提訴して現在も争っており、援護対象区域外にいた原告の訴えを認めた広島高裁判決を歓迎する声が上がった。

岩永千代子さん
岩永千代子さん

 長崎では原爆投下当時の行政区域を基に、爆心地から南北各約12キロ、東西各約7キロのいびつな形で被爆地域が指定されている。被爆地域内の被爆者は被爆者健康手帳を所持し、医療費が無料となるのに対し、同じ半径12キロ以内でも被爆地域の外側にいた「被爆体験者」への援護内容は、1年に1回の無料健康診断など限られている。

 このため、12キロ圏内でも被爆者と認められない東西約7~12キロの「被爆体験者」が2007年以降、放射性物質で汚染された水や農作物などを摂取し内部被ばくしたとして、被爆者健康手帳交付を求めて長崎地裁に集団提訴した。しかし、地裁、福岡高裁ともに訴えを退け、17年に最高裁で敗訴が確定。11年には第2陣が提訴し、長崎地裁が161人のうち10人を被爆者と認めたが、福岡高裁で全員敗訴し、19年に最高裁で敗訴が確定した。1陣、2陣の原告の一部は再提訴し、長崎地裁で争っている。

 広島高裁の判決を受け、長崎市内で記者会見した第1陣の原告団長の岩永千代子さん(85)は「光が見えてきた。見捨てられたまま亡くなっていく被爆者の存在を歴史から消させないための礎になる判決だ」と評価。第2陣の原告団長の山内武さん(78)は「今回の判決が私たちの訴訟に良い影響を与えてほしい」と期待した。弁護団の三宅敬英(としひで)弁護士は「長崎も広島と同じ論点で闘っており、長崎の原告の全面勝訴、全面救済につながる一歩だ」と話した。【中山敦貴】

阿蘇のコシヒカリの農家さんのご紹介 2022 水田土壌はセシウム137 2.2ベクレル/kg セシウム134は不検出(<0.084)

阿蘇のコシヒカリ農家さんの農地土壌を採取し、阿蘇のコシヒカリの水田土壌を測定させていただきました。

 ちくりん舎のゲルマニウム半導体検出器で68.6時間測定で、セシウム134 不検出(検出限界0.084ベクレル/kg)、セシウム137だけが検出されました。2.2±0.45ベクレル/kgです。 

水田土壌測定結果 

阿蘇 水田土壌(阿蘇市中原154) 1822.6g セシウム134 不検出(検出限界0.084ベクレル/kg) セシウム137 2.2±0.45Bq/kg 土壌採取日 2022年6月9日 14:00pm 測定日 2022年7月1日 Ge半導体検出器 68.6時間測定

 これはほぼ大気圏内核実験によって降下したセシウム137のみと考えられるほど低い汚染度であると思います。2009年平均の日本全国の土壌0~5cmのセシウム137の汚染度は下記をご覧下さい。熊本県阿蘇市西原村の土壌はセシウム137が38ベクレル/kg(表土0~5cm)でした。これと比較すると非常に低い汚染であると考えられます。

 この阿蘇のコシヒカリを1俵(30kg入りを2つ、玄米です)、送料込みで27,000円で販売します。このうち、1000円分は、ゲルマニウム半導体検出器で24時間以上測定した際の検査費用として使わせていただきます。<申し込み方法は一番下にあります>

ちくりん舎測定結果報告書 熊本県阿蘇市 水田土壌 中原154 セシウム134 ND(<0.0075) セシウム137 1.9 2021年6月10日 14:00 採取
ちくりん舎測定結果報告書 熊本県阿蘇市 水田土壌  中原154(試料稲土壌)14工区 セシウム134 ND(<0.084) セシウム137 2.2 スペクトルデータ 2022年6月9日 10:00am採取 

ちくりん舎測定結果報告書 熊本県阿蘇市 水田土壌  中原154(試料稲土壌)14工区 セシウム137 2.2±0.45 スペクトルデータ 2022年6月9日 10:00am採取

土壌 0から5cm 中のセシウム137測定値 2009年度年間平均 環境中の放射能より

 原発事故前の水田土壌中のストロンチウム90とその土壌で育った白米中のストロンチウム90、水田土壌のセシウム137とその土壌で育った白米中のセシウム137のデータです。セシウム137が水田土壌に5.7ベクレル/kgあって、白米には0.063ベクレル/kgなどです。つまり、今回の熊本県阿蘇市のように水田土壌にセシウム137が2.2ベクレル/kg程度であれば、白米には0.1ベクレル/kgもない、ということを示しています。

2009年度 白米および水田土壌のストロンチウム90、セシウム137濃度 単位 ベクレル/kg

 東電福島第一原発事故前には、白米中のストロンチウム90は0.005ベクレル/kg程度、セシウム137は0.05ベクレル/kg程度まで下がっていました。熊本県阿蘇市のお米はこの程度の放射能汚染であると思います。

玄米と白米におけるSr90とCs137濃度の経年推移(全国平均) 駒村ら 2006年

阿蘇のコシヒカリ栽培農家

熊本県阿蘇市
農業者 田中幸博さん
経営規模 水田   465アール
     水稲   120アール
     飼料稲  250アール
    ねぎ    25アール  
     飼料作物  70アール  


繁殖牛(褐色和牛) 5頭 阿蘇のあか牛を飼育

このお米は、除草剤を1回だけ使用し、有機肥料で育てた、有機肥料・減農薬の特栽米です。

 この阿蘇のコシヒカリを1俵(30kg入りを2つ、玄米です)、送料込みで27,000円で販売します。このうち、1000円分は、ゲルマニウム半導体検出器で24時間以上測定した際の検査費用として使わせていただきます。また、半俵(30kg入り1袋)も販売します。13,500円とさせていただきます。

 また、ねぎ5kgも販売します。送料込みで1箱5kg入り4000円です。お金はお米と同時期に納入いただきますが、ねぎの発送は一番おいしくなった12月の中旬に送らせていただきます。

 数量は24俵です。9月22日までに下記のアドレスまでに、下記の内容をお申し込み下さい。かならず、下記の内容をお書き下さい。また、同様に9月30日までに1俵あたり27,000円をお振り込み下さい。9月20日過ぎには発送させていただきます。振り込み先は申し込みを確認した際に改めてご案内します。

申し込みアドレス

entry.naibu@gmail.com 内部被ばくを考える市民研究会事務局

申し込み内容

1.氏名
2.メールアドレス
3.申し込み俵数・箱数 阿蘇のコシヒカリ  俵

         ねぎ  箱

(1俵あたり27,000円、ねぎ5kg 1箱4,000円、お米半俵の場合は13,500円)
4.送付先住所
5.電話番号
6.振り込み金額      円

(1俵あたり27,000円、ねぎ5kg 1箱4,000円、お米半俵の場合は13,500円)
7.振込者名
※ 申し込み者と振込者名が違う場合は必ず7番をお書き下さい。
同じ場合は「1に同じ」で結構です。

申し込み締め切り 2022年9月15日 第1次締め切り
2022年9月22日 第2次締め切り

メールの申し込み後、振込先をご連絡します。

内部被ばくを考える市民研究会 例会 2022年7月3日(日)13:30~15:30 ツィキャスのみ配信

※ 基本的に毎月日曜日に開催しています。以下、ツイキャスをご覧下さい。会員の方はZoomでも視聴できます。

ぜひ、ツィキャスをご覧下さい。

ツイキャス http://twitcasting.tv/naibuhibakushim/show/

本日のテーマ

1. [連続講座4] 内部被ばく1ミリシーベルトは放射性セシウムがか
らだに5万1000ベクレルあること。死の危険。放射能の単位、ミリシー
ベルトとは。<続編>

福島県県民健康管理調査検討委員会 検査結果の見かた 1mSvとはセシウム134が2万 セシウム137が3万1000ベクレルあること 枠付き 20110724 拡大版

13:30~14:00 報告 川根眞也

2. 福島県の小児甲状腺がん、原発事故の影響ではないのか?隠され
た初期被ばくを追う。311子ども甲状腺がん裁判に支援を!

14:00~14:30 報告 川根眞也


3. 東電 福島第一原発事故、国に責任はないとした6.17最高裁判決文
を読む/葛尾村、大熊町の「特定復興再生拠点区域」避難指示解除は間違いだ

14:30~15:00 報告 川根眞也


4. ドイツの脱原発とNATOの非核兵器化、日本は何をしているのか?

  15:00~15:30 報告 川根眞也

ツイキャス http://twitcasting.tv/naibuhibakushim/show/

 5月例会より、およそ24回連続で、原発事故と内部被ばくについて連続講座を開いていきます。川根が原発事故以降11年間にかけて、調べて、読み、考えてきたこと。そして、第1種放射線取扱主任者試験の勉強を通じて理解したこと。国際放射線防護委員会(ICRP)、国連科学委員会(UNSCEAR)、国際原子力機関(IAEA)、放射線影響研究所(RERF)、日本の放射線医学総合研究所の、放射線防護学の誤りについて、お話ししていきたいと思います。

 第4回目は放射能の単位、ミリシーベルトとは。<続編>についてです。

 記事1は、2022年6月30日に「特定復興再生拠点」が避難指示解除された大熊町についてのものです。この中で「東北大の吉田浩子研究教授(放射線防護)は「帰還した住民は大半の時間を家の中で過ごす。復興拠点でも住民の被ばく量は年間1ミリシーベルト程度に落ち着くはずで、健康リスクは十分低い」と説明する。」と書かれています。土地の放射能汚染を無視した、暴論です。この帰還困難区域に住民を帰還させることは、緩慢な殺人を意味すると思います。ベクレルとミリシーベルトとの関係を考えていきます。

<参考>

大熊町の土壌汚染はチェルノブイリを超えている 2013年5月6日 内部被ばくを考える市民研究会資料

https://www.radiationexposuresociety.com/archives/2935

[記事1]

福島第1原発事故 大熊町、一部避難解除 復興拠点、かさむ費用 除染・解体、6町村で2911億円 

2022年7月1日 毎日新聞 朝刊 19面

 東京電力福島第1原発事故に伴う福島県の帰還困難区域のうち、政府が優先的に除染を進めてきた特定復興再生拠点区域(復興拠点)で避難指示の解除が始まった。最初の葛尾(かつらお)村が6月12日から、2例目の大熊町は30日からで、全町民の避難が唯一続く双葉町でも近く解除される見通し。ただ、将来にわたり避難指示が続くとされた帰還困難区域に人が住めるようにする取り組みには、課題も少なくない。【尾崎修二】

 「町の復興に向けた大きな節目だ。ようやくスタートラインに立った」。大熊町のJR大野駅前で30日午前9時、避難指示の解除に合わせて始まったパトロールの出動式で、吉田淳町長はこう述べた。周辺は再開発のまっただ中。行き交うのは、除染や建物の解体に取り組む業者がほとんどだ。

 帰還困難区域は、政府が2011年12月時点で、年間の放射線被ばく線量が50ミリシーベルト(毎時9・5マイクロシーベルト相当)を超え、5年たっても20ミリシーベルトを下回らないと見込まれた地域を指す。県内7市町村(南相馬市、飯舘村、葛尾村、浪江町、双葉町、大熊町、富岡町)の約3万3700ヘクタール。13年8月までに設けられ、当初は定住できないとされていた。

 だが、政府は16年8月、年月を経て空間放射線量が下がり、地元の要望も根強くあるとの理由で、除染の済んだ一部地域で避難指示を解除する方針を決めた。17~18年には南相馬市を除く6町村に復興拠点を設定し、除染やインフラ整備を優先的に進めた。

 避難指示解除の目安は、線量が毎時3・8マイクロシーベルトを下回ることだ。線量の高い地域ほど、除染の作業は大がかりにならざるを得ない。大熊町下野上の県立大野病院(閉鎖中)前では5月中旬、作業員たちが、歩道のアスファルト舗装の表面を重機ではがし、路盤と呼ばれる部分をさらに5センチ削り取る作業に汗を流した。

 環境省のガイドラインによると、道路の除染は、主として路面を洗い流したり、表面を削ったりする作業だ。だが、大野病院前では、雨水が染み込んだ亀裂の付近の線量が高く、たまった土をかき出しても線量は下がりきらなかった。舗装をはがす除染は双葉町や富岡町でも行われたという。

 環境省によると、ガイドライン記載の作業だけでは除染が不十分な事例は他の復興拠点でも散見された。同じ場所での除染が繰り返され、当初は「今年春ごろ」とされた避難指示の解除は6月末にずれ込んだ。

 大熊町の依頼で除染の効果や手法について検証した小豆川勝見・東京大助教(環境分析化学)は「帰還困難区域の除染は従来と次元が違う。相当な手間とコストがかかる」と指摘する。

 6町村の復興拠点は計約2747ヘクタールで、実際に除染する面積は計約2166ヘクタール。除染はおおむね完了しており、22年度末までの除染費用は家屋の解体費も含めて2911億円に上る見通しだ。1ヘクタール当たり約1億3400万円の計算。住民や自治体の要望があれば、今後もさらに作業を続ける。従来の除染は東電が費用を負担してきたが、帰還困難区域については、住民に対する東電側の賠償は済んだとして、全額が国費でまかなわれる。

福島第1原発事故 大熊町、一部避難解除 復興拠点、かさむ費用 除染・解体、6町村で2911億円 2022年7月1日 毎日新聞 朝刊 19面

残る不安、帰還少なく

 復興拠点の避難指示解除が先行する葛尾、大熊、双葉の3町村は、当面の帰還者がごく一部にとどまる見通しだ。解除を前に、帰還に向けて寝泊まりする「準備宿泊」に登録した住民が、住民票を置く人の1~5%で、合計しても100人強にとどまっている。

 帰還困難区域がある7自治体のうち飯舘村を除く6市町村の住民を対象に、復興庁が21年に実施したアンケートによると、帰還しないと決めている理由(複数回答)で最も多かったのは、避難先に生活基盤が移ったことだ。大熊、双葉両町では6割近くを占めた。一方、空間放射線量や原発の安全性への不安を挙げる人も、大熊、双葉両町では2割強に上る。

 環境省によると、大熊町の復興拠点では、避難指示解除の目安となる線量(毎時3・8マイクロシーベルト)をおおむね下回るものの、毎時1~2マイクロシーベルト前後の地点は屋外に点在している。

 東北大の吉田浩子研究教授(放射線防護)は「帰還した住民は大半の時間を家の中で過ごす。復興拠点でも住民の被ばく量は年間1ミリシーベルト程度に落ち着くはずで、健康リスクは十分低い」と説明する。

 ただ、住民の受け止め方は一様ではない。

 避難指示の解除を待って帰還したいという双葉町の男性(71)は自ら重機を運転し、自宅裏山の樹木を伐採した。落ち葉や表土を取り除く環境省の除染だけでは不安だったからだ。

 線量が局所的に高い「ホットスポット」が自宅の庭で見つかった大熊町の70代女性は「他地域より線量が高いまま『解除』といわれても納得できない」という。「もう放射線は気にしていない」という住民もいる一方で、「子どもを住ませるのは不安」などの声もある。

 「避難指示解除はゴールではなく、復興のスタートだ」。岸田文雄首相は6月5日に葛尾村を視察してこう述べた。残る浪江、富岡、飯舘の3町村にある復興拠点は、来春ごろまでの避難指示解除が見込まれる。

 吉田研究教授は「点在する高線量のスポットには長居しないよう注意を喚起し、帰還する住民が気軽に放射線に関する心配事を相談できる仕組みを作ることが必要だ」と指摘し、政府や自治体が住民に対し、息の長い支援を続けるよう求めている。


帰還困難区域を巡る動向

2011年

  3月 原発事故が発生。その後、20キロ圏内などが警戒区域に

 12月 政府が避難指示区域の再編を決定。新設の帰還困難区域は「将来にわたり居住を制限する」と定義

  13年

 12月 「全員帰還」の原則を転換し、帰還困難区域の住民らの避難先への移住を支援する指針を政府が決定

  16年

  8月 帰還困難区域の一部に「復興拠点」を設けて集中的に除染し、5年後をめどに避難指示の解除を目指す方針を政府が決定

  17年

  6月 政府が復興拠点を国費で除染する方針を決定。その後、18年5月までに各復興拠点を設定。除染やインフラ整備が始まる

  20年

  3月 JR常磐線の全線開通に伴い、復興拠点内にある鉄路や駅周辺の避難指示が解除

  21年

  8月 復興拠点ではない帰還困難区域への帰還希望者の宅地や道路を除染する方針を政府が決定

  22年

  6月 葛尾村と大熊町の復興拠点で避難指示が解除

トリチウムの「線質係数」は1.7ではなく、4か5にすべきだ。ーカール・Z・モーガン

 アメリカの原爆開発”マンハッタン計画”に携わり、その後も原発や原子力産業で働く作業員の被曝許容線量を求めてきたカール・Z・モーガン。彼は、1950年から1971年までの間、国際放射線防護委員会(ICRP)および全米放射線防護委員会(NCRP)の内部被ばく線量委員会委員長を務めた。そのカール・Z・モーガンが著書『原子力開発の光と影 核開発者からの証言』昭和堂、2003年で、トリチウムのDNAへの危険性について語っている。1947年にモーガンたちが考えたよりも、50倍癌のリスクが高まっているにもかかわらず、放射線防護基準を決める機関である国際放射線防護委員会(ICRP)が、トリチウムの「線質係数」を1.7から1に引き下げたと書いています。モーガンは、トリチウムの「線質係数」は1ではなく5に引き上げるべきだ、と書いています。

 より高い「線質係数」を使うと、政府がトリチウムを使った兵器製造ができなくなるからである。

 以下、『原子力開発の光と影 核開発者からの証言』第7章 保健物理学の発展と衰退 より該当部分を引用する。

カール・Z・モーガン『原子力開発の光と影 核開発者からの証言』昭和堂、2003年

第7章 保健物理学の発展と衰退 pp.153~155

 1960年の早い時期、当時世界で最も著名な遺伝学者であるH.J.ミユーラー(H.J.Muller)と私は、「10日間規則」として一般に知られるようになった事柄を
国際放射線防護委員会(ICRP)が確信をもって採用できるように国際放射線防護委員会(ICRP)の支援に精力を傾けた。この規則の目的は、胎児が障害を受けないように出産年齢の婦人を防護することである。容易に実行できるようにするため、この規則は、出産年齢の婦人に対する骨盤、腹部のエックス線診断は、月経開始に続く10日間に延期すべきであると述べている。

 この規則の大部分は、アリス・スチュアート(Alice Stewart )の世界的に受け入れられている研究結果に基づいている。後年国際放射線防護委員会(ICRP)は、「この10日間規則」を弱め実質的に廃止した。

 国際放射線防護委員会(ICRP)はまた、核融合爆弾の主要構成要素であるトリチウム(3H)の危険性に関連して自らの名誉を悪用した。

 トリチウムは、非常に弱いベータ・エネルギー放出核種で、人間の組織に沈着すると破壊的になりうる。低エネルギー・ベータ粒子が人間の組織に与える影響を理解するために、有用であるがぞっとする類似性を以下に述べる。テロリストがマシンガンを発射しながら車で家のそばをとおりかかると想像してみる。もしテロリストが1時間に80マイル(約128キロメートル)で走る場合、多分10発以上の弾丸がその家には当たらないだろう。もし車が、1時間にわずか5マイル(約8キロメートル)で移動すると、何千発もの弾丸がその家に当たるであろう。これと同じようにゆっくりと動くベータ線放出核種であるトリチウムは、何千発もの「弾丸」を放出しながら……この場合、組織の原子から電子をたたき出しながら組織を移動する。

 トリチウム(3H)がどれほど危険であるかということを私たちが明らかにしたので、私と同じオークリッジ国立研究所(ORNL)保健物理部の次長であるとともに、国際放射線防護委員会(ICRP)の内部被ばく線量委員会の事務局員でもあったW.S.スナイダー(W.S.Snyder)が、私と一緒にトリチウムの「線質係数」の値を上げるよう命がけで努力した。「線質係数」を上げることは放射性核種の最大許容濃度(MPC)の値を比例して下げることになる。放射性核種の最大許容濃度(MPC)が低くなれば、産業界と軍にとってこれに対応するためにより困難が生じ経費がかかるので重大なことである。他の表現をすると、「線質係数」が高くなると、トリチウムに対する放射性核種の最大許容濃度(MPC)が低くなり、放射線を取り扱っている施設に雇用されている人の作業条件がより安全になる。

 スナイダーと私は、トリチウムの「線質係数」は1.7から4あるいは5に上げることを議論した。私たちは、強い反対に直面した。英国出身の国際放射線防護委員会(ICRP)のメンバーであるグレッグ・マーレイ(Gregg Marley)は、少なくとも原子力産業界が国際放射線防護委員会(ICRP)に対して密接な関係を持っていることを率直に認めている。国際放射線防護委員会(ICRP)主委員会の会議の際に、マーレイはスナイダーと私が望んでいる、より高い「線質係数」を使えば作業条件はその分だけ安全になるが、そのように変えると政府はトリチウムを使った兵器製造ができなくなるということを公に認めた。同じことがロス・アラモスにおいても真実であり続けた。

 私がとくに当惑させたことは、ロス・アラモスでグルーブ・ボックスに手を入れている大多数の放射線作業者が婦人だったことである。(グローブ・ボックスは、科学者、技術者が彼らまたは彼女らなどの手が放射性物質で汚染すること、あるいは、放射性物質を呼吸により体内に取り込むことを防ぐための装置である。この箱は、直径8インチ(約20センチメートル)の開口部を持つ約4フィート(約120センチメートル)の中さの立方体でゴムの手袋が装着されている。作業者は、汚染物質を手袋で掴むことができる。フード内は、吸入を防ぐために排気されている。)1970年に私が国際放射線防護委員会(ICRP)を去って間もなく、トリチウム問題は、「線質係数」を1.7から1に引き下げることにより解決し、それが現在も残っている。その値は3以下にするべきではなく、適切な値は5であろう。

 放射線被ばくによる癌のリスクは、私たちが1947年に考えたよりも50倍高くなると現在認められているが、このことの根拠について議論されていないという理由で放射線防護基準を決める機関が最大許容被ばくレベルを上げることは良心的ではない。

 私は、リスクが高くなったという意見があるにもかかわらず、許容被ばくレベルを下げるのではなく、上げたことに国際放射線防護委員会(ICRP)に対する不満を記録に残した。私は、許容被ばくレベルを上げたことは、もがきながら進んでいく原子力産業を救出したいという希望を背景に形成された利害の深刻な衝突に直接起因していると固く信じている。

国連科学委員会1977年報告 p.476~477 ANNEX H 375 376 377 トリチウム水によるヒトリンパ球の染色体異常の誘導 堀雅明 中井斌による研究

 以下の、国連科学委員会(UNSCEAR)1977年報告に掲載された、トリチウム水によるヒトリンパ球の染色体異常の誘導 堀雅明 中井斌による研究である(UNSCEAR 1977 ANNEX H 375 376 377)。その前の372から全文を紹介する。DeepLによる翻訳である。


国連科学委員会1977年報告 ANNEX H 375 376 377 トリチウム水によるヒトリンパ球の染色体異常の誘導
  1. トリチウム(3H)

(a)マウスの優性致死遺伝の誘発

  1. Carsten and Commerford (81) と Carsten and Cronkite (80) は、トリチウム水(HTO)を与えたマウス(ランダム飼育の Hale-Stoner-Brookhaven 系統)において、ドミナントレサルを誘発する研究結果を発表している。HTO試験動物は、4週齢の離乳時からHTO(3μCi/ml)で飼育された8週齢の動物の交配から生まれた初産マウスであった。対照動物は、コロニーから採取した水道水飼育の初生児マウスである。2世代目の動物から、優性致死試験用に4つの実験群を設定した。グループlは、雄と雌の両方がHTOを投与された動物で構成された。グループ2のメスはHTOを、オスは水道水を投与した。第3群は第2群とは逆に、第4群には水道水のみを与えた(雌雄とも)。8週齢になると、各グループにおいて、各オスは5匹のメスと5日間交配し、この交配期間の中間点から15日後にメスを殺し、子宮内容物を調べて優性致死を評価した。
  2. その結果、対照群366頭、第1群764頭、第2群315頭、第3群316頭の妊娠雌牛に基づき、男女ともにHTOにより優性致死が誘発されることが明確に示された。交配相手が2人とも、あるいは雌だけがトリチウムを投与された場合、生存胚の数は著しく減少した。同様に、交配相手を両方ともトリチウムにした場合、初期死亡(暗黒モグラ)の発生率が対照群より有意に高くなった。雄だけを処理しても同様の効果が得られたが、これは有意ではなかった。着床後の死亡率(著者らの用語では早期死亡+後期死亡)を比較の基準とすると、第2群および第3群のHTOによる死亡率の増加は男女とも同じ大きさであり、第1群(男女ともHTO)ではその効果は第2群または第3群のほぼ2倍であった。現在の実験は、1.0μCi/mlの低濃度でこれらの研究を繰り返すことに向けられている。

(b) 雄マウスにおける特異的遺伝子座突然変異の誘発

  1. Cummingら(128)はマウスにおける3H誘発特異的遺伝子突然変異に関する最初の一連の実験を完了し、あらゆる哺乳動物におけるそのような遺伝子突然変異に関する利用可能な唯一のデータを提供した。既存の原子力施設だけでなく、計画中の制御熱核反応炉からもトリチウムが放出される可能性があることを考慮すると、これらのデータは非常に重要である。合計 14 群の雄を使用した。その結果、トリチウムの崩壊によるベータ線は、精原細胞および減数分裂後の段階で特定の遺伝子座の突然変異を誘発することが示された。精原細胞に照射した生殖細胞から生まれた合計20 626個に16個の突然変異が、また、減数分裂後のステージに照射した7943個に11個の突然変異が確認された。精原細胞の平均吸収線量は700rad、後生物細胞のそれは430radと推定された。これらのデータから推定される突然変異率は、精原細胞では1遺伝子座当たり1.58 10-7 rad-1、その他の段階では1遺伝子座当たり4.60 10-7 rad-1である。これらの突然変異率は、X線またはガンマ線による同等の外部被曝線量から予想される統計的限界の範囲内である。精子形成後段階のRBEの点推定値は1に近く、信頼区間はかなり広い。精原細胞のRBEは2をやや上回り、信頼区間には1も含まれている。7つの遺伝子座における突然変異体の分布は、ガンマ線によって生じた分布とは異なる可能性があることを示すいくつかの兆候がある:注目すべきは、突然変異のうち1つだけがs遺伝子座にあったという観察である(予想では約5、6個となる)。最近の研究では、Cumming と W. L. Russell (129) が精原細胞における突然変異の誘発に注目し、トリチウム照射に関するより広範なデータの収集に従事している。

(c) トリチウム水によるヒトリンパ球の染色体異常の誘発 ( HTO )

  1. Hori and Nakai (233) と Bocian ら (39) は、in vitro でトリチウム水に暴露されたヒトリンパ球に染色体異常が誘発されることを報告している。HoriとNakaiの研究では、トリチウムの濃度は1 10-6 μCi/mlから1 10-2 μCi/mlで、細胞は培養中の全期間(48時間)被曝させられた。Bocianらは2つの方法を用いた。1つは(著者らの用語で「急性被曝」)、リンパ球をPHA刺激前に2時間被曝させ(濃度範囲、1.71-14.36 mCi/ml)、その後洗浄、培養したもの(53時間培養)、もう一つは(「長期的な系列」)は細胞を53時間にわたって被曝させた(濃度範囲、0.063-0.51 mCi/ml)。
  2. その結果、長時間の被曝(48時間または53時間)では、生じた異常は主にギャップ、欠失、断片などの染色体タイプであり、染色体交換は比較的少なかったことが分かった。
    交換は比較的少なかった。堀と中井が用いた濃度範囲では、低濃度では誘発される切断の数に対する線量効果曲線は非常に複雑であった。Bocianらの仕事と彼らが使用した濃度範囲では
    Bocianらの研究および彼らが用いた濃度範囲では、染色体異常の頻度は線量に対して直線的に増加した。しかし、各グループが使用した固定時間は1回だけで、しかも濃度の範囲が異なっていたので、2つのグループの著者間の頻度の定量的比較は不可能であった。
  3. Bocianらの2時間暴露実験では、染色体異常の誘発が確認された(ダイセントリック、セントリックリング、ターミナルおよびインタースティシャル欠失)。ダイセントリックとリングのデータ、および欠失のデータは、線形+二次モデルによく適合した。X線照射実験(50-300radの急性線量)で得られたデータを用いた。Bocianらは、二動原体+動原体輪の誘発に対するRBEは約1.2であると推定している。

原文 

SOURCES AND EFFECTS
OF IONIZING RADIATION
United Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation
1977 report to the General Assembly, with annexes

  1. Tritium (3 H)

(a) Induction of dominant lethals in mice

  1. Carsten and Commerford (81) and Carsten and Cronkite (80) have published the results of their studies on the induction of dominant lethals in mice (random-bred, Hale-Stoner-Brookhaven strain) fed with tritiated water (HTO). The HTO test animals were first-litter mice resulting from breeding of eight-week-old animals that had been maintained on HTO (3 μCi/ml) since weaning at four weeks of age. The control animals were first-litter mice taken from the colony and maintained on tap water. From the second generation animals. four experimental groups were established for dominant lethal tests. Group l consisted of animals where both the male and female were on HTO. Group 2 females received HTO. males, tap water. In group 3, the situation was the reverse of that in group 2. and group 4 received only tap water (both males and females). At eight weeks of age, in each group. each male was mated to five females for a 5-day period, and 15 days after the mid-point of this breeding period, the females were killed and their uterine contents examined for assessing dominant lethality.
  2. The results, based on 366 pregnant females in the controls, 764 in group 1, 315 in group 2. and 316 in group 3, clearly demonstrated that dominant lethals are induced by HTO in both sexes. Significantly fewer viable embryos were found when either both mating partners or only the female was maintained on the tritium regimen. Similarly. when both the partners were on tritium, the incidence of early death (dark mole) is significantly higher than in the control group. Treatment of the males only gave similar effects, but these were not significant. When post-implantation mortality (early plus late deaths in the authors’ terminology) is used as the basis for comparison, the increased mortality due to HTO in groups 2 and 3 is of the same magnitude in both sexes, and in group 1 (both sexes on HTO) the effect is nearly twice that in groups 2 or 3. Current experiments are directed at repeating these studies with a lower concentration of 1.0 μCi/ml.

(b) Induction of specific-locus mutations in male mice

  1. Cumming et al. (128) have completed the first series of experiments on 3 H-induced specific-locus mutations in mice, providing the only data available on such gene mutations in any mammal. In view of possible levels of tritium release,. not only from existing nuclear installations but also from contemplated controlled thermonuclear reactors. these data are of great relevance. A total of 14 groups of males was used. Two groups were injected with 0.75 mCi, and the 12 others with 0.50 mCi, of tritiated water per gram of body weight.The results demonstrate that beta radiation from the decay of tritium can induce specific-locus mutations in spermatogonia as well as in post-meiotic stages: 16 mutations have been recovered among a total of 20 626 offspring derived from germ cells irradiated as spermatogonia and 11 in 7943 offspring from irradiated post-meiotic stages. The mean absorbed dose to the spermatogonial cells has been estimated to be 700 rad and that to post-meiotic cells, 430 rad. These data thus permit mutation-rate estimates of 1.58 10-7 rad-1 per locus for spermatogonia and 4.60 10-7 rad-1 per locus for the other stages. These rates are within the statistical limits of what would have been expected from a comparable external dose of x or eamma irradiation. The point estimate of the RBE for post-spermatogonial stages is close to 1, with fairly wide confidence intervals; that for spermatogonia is slightly above 2, with confidence intervals that include 1. There are some indications that the distribution of mutants among the seven loci may differ from that produced by gamma rays: noteworthy is the observation that only one of the mutations was at the s locus (the expectation would be about 5 or 6). In more recent studies, currently in progress at Oak Ridge.,Cumming and W. L. Russell (129) are engaged in collecting more extensive data on tritium irradiation, focusing attention on the induction of mutations in spermatogonia.

(c) Induction of chromosome aberrations in human lymphocytes by tritiated water ( HTO)

  1. Hori and Nakai (233) and Bocian et al. (39) have reported on the induction of chromosome aberrations in human lymphocytes exposed to tritiated water in vitro.Exposures were carried out by the addition of whole blood to the culture medium containing tritiated water. In the work of Hori and Nakai, the concentration of tritium ranged from 1 10-6 μCi/ml to 1 10-2 μCi/ml, and the cells were exposed during their entire period in culture ( 48 h). Bocian et al., used two regimens: in one (“acute exposures” in the authors· terminology), the lymphocytes were exposed for a 2-h period prior to PHA stimulation (range of concentrations, 1.71-14.36 mCi/ml), after which they were washed and cultured (53-h cultures); in the other (“protracted series”) the cells were exposed during 53 h (concentration range, 0.063-0.51 mCi/ml).
  2. The results indicate that with protracted exposures (48 or 53 h) the aberrations produced were mos~ly of the chromatid type. such as gaps. deletions and fragments, and there were relatively few chromatid
    exchanges. In the concentration range used by Hori and Nakai, the dose-effect curve for the number of breaks induced was quite complex at low concentrations. In the work of Bocian et al. and with the range of
    concentrations they used, the frequency of chromatid aberrations increased linearly with dose. A quantitative comparison of the frequencies between the two groups of authors is, however, not possible because each group used only one (but different) fixation time, and in addition. the ranges of concentration were different.
  3. In the 2-hour exposure experiments of Bocian et al., chromosome-type aberrations were found to be induced (dicentrics, centric rings, terminal and interstitial deletions). The data for dicentrics plus rings, as well as those on deletions, gave a good fit to a linear plus quadratic model. Using the data obtained in x irradiation experiments (acute doses of 50-300 rad). Bocian et al. have estimated that the RBE for the induction of dicentrics plus centric rings is about 1.2.