髙野徹氏の青年から微細な甲状腺ガンがあるので、福島県の甲状腺ガンは原発事故の放射線の影響ではない。あえてスクリーニング検査で甲状腺ガンを見つけて、手術することは本人に“がん患者”であるというレッテルを貼ることになり、進学、就職、結婚、出産においてハンディを負うことになるからデメリットの方が大きい、と言う主張は、ベラルーシ、ウクライナ、ロシアの住民の健康被害を調査してから、言って欲しいです。現在でも高放射能汚染地帯で地元野菜や牛乳、きのこを食べている住民は甲状腺ガンを発症しています。40代で多臓器ガンにかかって亡くなる人がいます。女性は妊娠できず、やっと生まれても白血病で亡くなるケースがあります。高放射能汚染地域で起きているのは、原発事故から10数年間の小児甲状腺ガンだけではありません。さまざまなガンや白血病、不妊、そして先天的奇形です。甲状腺ガンは原発事故から34年たった現在でも多発しています。原因はヨウ素131ではなく、食べ物からまたは塵・ほこりを吸い込んだ時に入るセシウム137やストロンチウム90でしょう。かの地の住民の健康被害を見ないことをするのは簡単です。International Dose Response Society などの論文だけを読んでいればいいのですから。
臨床心理士の成井香苗氏は、1巡目の報告書で採用していた4区分で解析したところ、線量の高いとみられる避難区域、中通り、浜通り、会津の順に甲状腺がんが多かったとしたことを指摘しました。部会で研究デザインが大幅に変更されたのは理解できないと強く反発しました。福島県内を回って心理職をしている立場として地域4区分は妥当な区分だと実感しているとして、線量が不確かなのは、UNSCEARの推計も変わらないと反論。「なぜ4地区で解析できないのか」と迫りました。(甲状腺がん報告書を一部修正へ〜「被曝と関係認められない」見直し our planet tv 2019年7月5日)
<参考>海野信也ほか Effect of the Fukushima nuclear
power plant accident on radioiodine (131I) content in human breast milk The Journal of Obstetrics Gynaecol Research 2012 May;38(5):772-9.
私自身(放射線医学総合研究所 栗原理)の甲状腺測定結果は… 栗原理 Dose assessment of internal exposure Reconstruction of early internal dose to Fukushima residents 第2回放射線医学総合研究所シンポジウム 2013年1月27日
<参考>栗原理 Dose assessment of internal
exposure Reconstruction of early internal dose to
Fukushima residents 第2回放射線医学総合研究所シンポジウム 2013年1月27日
チェルノブイリ原子力発電所事故後,周辺地域では若年者を対象とした甲状腺超音波検査によるスクリーニングが行われ,数千人に及ぶ甲状腺がんの患者が見つかりその多くが手術を受けている(Demidchik et al., 2007)。しかし,現在ではチェルノブイリにおいては確かに放射線が原因のがんの
増加はあったものの過剰診断の症例もまた含んでいたと考えられている(Jargin,
2011)。
―髙野徹「福島の甲状腺がんの過剰診断―なぜ発生し、なぜ拡大したか―」日本リスク研究学会誌,2019年,28(2):
67–76
しかし、髙野徹氏が、チェルノブイリでも過剰診断が起きていたとして引用した論文Sergei V. Jargin , 2011年を読むと、たった4ページ、それも2003年に放射線のホルミシス効果を研究する雑誌として創設された、International Dose Response Societyという雑誌に掲載された論文でした。参考文献もほとんどが西側の科学者によって書かれたものです。または国連科学委員会UNSCEARのものです。なおかつ、Sergei V. Jargin は、同論文の中で、アレクセイ・V・ヤブロコフ氏らの労作『調査報告 チェルノブイリ被害の全貌』の一部分、第6章 チェルノブイリ大惨事以降の腫瘍性疾患だけを取り出し、原発事故による健康被害を過大評価していると名指して批判しています。ヤブロコフ氏がソ連の科学者にテーマを割り当て、「期待される結果」を導き出したと批判しています。しかし、Sergei V. Jargin は、その批判の根拠を何一つ示していません。もはや誹謗中傷のレベルです。興味深いことに、Sergei V. Jarginはこの論文(論文の体裁をなしていない)で、チェルノブイリ原発事故の被害を強調することが世界の原子力発電の発達を阻害した、とも書いていることです。チェルノブイリ原発事故の小児甲状腺ガンのスクリーニングとその後の手術が正しかったのか、どうかよりも、世界の原子力発電の運転や増設に興味がある人物のようです。この論文を読んでも、どこに「チェルノブイリにおいては確かに放射線が原因のがんの増加はあったものの過剰診断の症例もまた含んでいたと考えられている」と考えられるデータや分析が分かりませんでした。
<参考>THYROID CANCER AFTER CHERNOBYL: OBFUSCATED TRUTH Sergei V. Jargin International Dose Response Society 2011年
一方、ベラルーシで子どもたちの甲状腺疾患の診断と治療に勢力的に働かれたエフゲニー・P・デミチック博士、ユーリ・E・デミチック博士は、こう論文に書いています。Thyroid cancer in
Belarus Evgueni P. Demidchik Yuri E.Demidchik ほか 2002
1986年4月および5月にかけて起きたチェルノブイリ事故は、放射線に被ばくした18未満の年齢で1500人に甲状腺がんの発症を促しました。悪性腫瘍は、主に乳頭ガン(93.5%)でした。
1990年から2000年までの期間の間、甲状腺がんは、子どもたち(15歳未満の年齢層)674人、青年(15~19歳の年齢層)262人、そして、若者(19~33歳の年齢層)564人から見つかりました。
小児および青年の甲状腺がんは、チェルノブイリ原子力発電所のより近くにあるゴメルとブレスト州でもっとも多く見つかりました1986~2000年の15年間で、放射線由来ではない自然の甲状腺がんは、17人の子どもたちだけでした。
子供たちの放射線によって誘発される甲状腺ガンは、甲状腺周囲に転移している場合が73%、遠隔転移している場合が16.6%でした。遠隔転移したのはは主に肺でした。18未満の年齢層で被ばくした集団のリスク解析の結果、以下のリスク係数が算定されました:絶対リスク係数10,000人年グレイあたりは1.93(1.79–2.06)と過剰な相対リスク係数はグレイあたり37.66(35.06–40.26)です。
The Chernobyl accident in April and May
of 1986 promoted thyroid carcinomas in 1500 patients who were exposed to
radiation at the age group under 18. The common type of malignancy was papillary
cancer (93.5%). For the period from 1990 to 2000, thyroid carcinomas were
diagnosed in
674 children (age group under 15), in 262
adolescents (age group between 15 and 19) and in 564 young adults (age group
from 19 to 33).
The highest number of thyroid
malignancies in children and adolescents was diagnosed in Gomel and Brest
oblasts located closer to the Chernobyl Nuclear Power Plant. For 15 years
(1986–2000), spontaneous (non-radiogenic) thyroid carcinomas appeared only in
17 children.
Thyroid cancer promoted by radiation in
children possesses the behavior to form the regional (73%) and distant
(16.6%) metastases, mainly in lung. As a result of performed risk analysis
for the cohort exposed at the age group under 18, the following values were obtained:
1.93 (1.79–2.06) per 104 PYGy for the absolute risk coefficient, and 37.66
(35.06–40.26) per Gy for the excess relative risk coefficient.
―Thyroid cancer in Belarus Evgueni P.
Demidchik Yuri E.Demidchik ほか 2002
きちんと、放射線由来の甲状腺ガンと原発事故由来の甲状腺ガンとを区別して、その発症人数を求めています。一方、髙野徹氏が引用した、ロシアの科学者(?)のSergei V. Jarginは、数多くのウクライナ、ベラルーシ、ロシアの子どもたちの患者の生のデータに向き合うことなく、甲状腺被ばく線量がいくつであるとか、LNT仮説(健康被害が被ばく線量に正比例するという仮説)がどうとか議論をしています。