福島甲状腺がん 背信の果て(1)(上) 線量測定わずか1080人   2019年1月21日 東京新聞 朝刊28面

 東京電力福島第一原発事故後、福島県は子どもの甲状腺がんを調べる検査を始めた。対象者は約四十万人。通常より多く見つかり、疑いを含め二百六人に上る。国や県は、がんの原因となり得る被ばくの線量が少ないことを主な理由にして事故の影響を否定する。しかし国が被ばく線量を測った子どもは千八十人のみ。今回判明した「一〇〇ミリシーベルトの少女」は漏れた公算が大きい。被害の全体像から目を背けた裏に何があったのか。情報開示請求で入手した文書で「背信」の数々を明らかにする。(榊原崇仁)

 「被害を隠したいのバレバレ」

 チェルノブイリ 30万人超調査

 「一〇〇ミリシーベルトの少女」が福島県双葉町にいたとされる事故発生時、同県中通り地方で暮らす中学三年生だった女性。大学進学後、甲状腺がんが見つかった。二十代の今、「私の家系で甲状腺がんになった人はいない。被ばく以外に原因が考えられない」と憤る。

 甲状腺は新陳代謝に関わるホルモンを分泌する器官。事故で放出された放射性ヨウ素は呼吸などで体に入ると甲状腺に集まり、がんの原因となる内部被ばくをもたらす。一九八六年のチェルノブイリ原発事故で、特に子どもの甲状腺がんが多発した原因とされる。がんの検査を行う県の資料にも、同事故で「一〇〇ミリシーベルト以上でがん発症」とある。

 二〇一一年三月、原発が次々と爆発し、大量の放射性物質が放出された。両親は「家の中にいて」と娘の身を案じた。それでも、進学する高校の手続きなどで外に出て、雨にも濡(ぬ)れた。

 四年後、大学生の時に福島県の超音波検査を受けた。その後、県立医科大に呼ばれ、詳しい検査の後、「甲状腺がんです」と宣告を受けた。「私は覚悟してたけど、母の泣きそうな顔を見るとつらかった」

 医大の患者対応に信頼が持てず、手術は別の病院で受けた。転移はなく、今は東京都内の会社で働く。時々、再発しないか不安になる。そしてもう一つ、消えない思いがある。「事故のせいでは」

 国、県はその思いを認めない。被災した人たちはそれほど被ばくしていないから、関連性は「考えにくい」という理屈だ。

 根拠の一つとなる甲状腺の被ばく測定は、国が一一年三月下旬に行った。対象は、避難や屋内退避の指示が出なかった原発から三十キロ以上離れた地域。福島県いわき市と川俣町、飯舘村で十五歳以下の千八十人を調べて打ち切った。この結果などを基に「線量が少ない」としている。

 だが、この数はチェルノブイリ事故の被災三カ国で測定した計三十万人以上と比べて少なすぎる。福島県が甲状腺がんの検査対象とした事故当時十八歳以下の県民約四十万人に占める割合も0・3%でしかない。

 実は、事故時、すでにあった国の指針類や福島県のマニュアルでは、放射性ヨウ素による内部被ばくを想定し、対応を示していた。チェルノブイリ事故後、子どもの甲状腺がんが多発したことも含め、国は当然、甲状腺被ばくの危うさを知っていた。それなのに、国は大多数の被災者の被ばく線量を測定しなかった。放射性ヨウ素の半減期は八日と短く、二、三カ月で消えてしまうため、今から測定し直すこともできない。

 女性も測定を受けておらず、憤りを隠さない。「もうバレバレですよね。被害を隠したいっていう意図が。世界的に起きたことがないような事故だから、いろんなデータを取らないと何も分からないのに。結局、補償を払いたくないんでしょうね」

線量測定わずか1080人   2019年1月21日 東京新聞 朝刊28面

福島県民はモルモットじゃない。ただちに18歳以上の甲状腺検査を行うべきだ。25歳時検診は甲状腺がん2人/受診者3161人の異常な発症率。

 昨日、2020年1月20日福島県県民健康調査検討委員会の第14回甲状腺評価部会が開かれました。今日2020年1月21日地元紙、福島民友、福島民報は2面で報道しました。しかし、全国紙、朝日、毎日、読売は1月21日朝刊全国版では一切、報道しませんでした。東京新聞も報道しませんでした。朝日、毎日、読売は何と、福島県版だけで報道しました。巻末に5紙の記事を掲載しました。

記事1  全国がん登録活用へ 県部会 甲状腺検査の受診率低下 2020年1月20日 福島民友 2面

記事2 がん登録情報活用 県民健康調査検討委 甲状腺検査評価部会 受診率低下で 2020年1月20日 福島民報 2面

記事3 データ解析向上へ がん患者DBと連携 甲状腺検査 2020年1月21日 読売新聞 福島県版29面

記事4 甲状腺検査の受診率が低下 県評価部会 2020年1月21日 朝日新聞 福島県版17面

記事5 甲状腺評価部会 新体制で初開催 2020年1月21日 毎日新聞 福島県版19面

 こうして、原発事故が引き起こした小児甲状腺がんの問題は、福島限定になり、日本の人々から忘れ去られていく効果を持っています。心配しているのは、福島県民だけ、という構図を作り出しているのは、大手新聞社です。

 市民メディアとして、our planet tvさんが甲状腺評価部会のライブ中継をしてくれています。our planet tvさん、ありがとうございます。

【ライブ配信】13:30〜甲状腺検査評価部会  our planet tv  2020年1月20日

 福島民友、福島民報の記事はどちらとも、前回第13回甲状腺評価部会が「2巡目検査について、現時点で甲状腺がんと放射線被ばくとの関連は認められないとの中間報告をまとめ、上部組織の県民健康調査検討委員会はこれを了承した」と無批判に報道しています。これは、2019年6月3日の第13回甲状腺評価部会で「 2巡目検査について、現時点で甲状腺がんと放射線被ばくとの関連は認められない 」との中間報告まとめを出したましたが、原案はまったく議論されないまま、一方的に了承されたものでした。県民健康調査検討委員会のまとめた甲状腺がんの患者数には、他に11人の患者が漏れていて、この11人のデータを無視した中間報告でした。

委員、直前まで知らされず~被曝否定の根拠データ our planet tv  2019年6月28日

 また、上部組織である県民健康調査検討委員会の第35回が2019年7月8日に開かれ、この中間報告が討議されました。その席上、中間報告が、 国連科学委員会(UNSCEAR)報告書の被ばく線量推計にまるごと依存して推論を立てていますが、この 国連科学委員会(UNSCEAR)報告書の被ばく線量推計 が不十分なのではないか、という指摘があり、この日7月8日には中間報告は了承されませんでした。しかし、星北斗座長預かり、という一方的なまとめを行って会は終了。そして、議論の経過が一切わからないまま、2019年7月末には福島県のホームページに「 部会まとめの報告を受け、所見に対して結論づけるのは早いのではないかとの意見もあったが、多くの委員の賛成のもと、検討委員会としては了承するものである」という一方的な「了承」という文書が掲載されました。

 「福島県の子どもたちの小児甲状腺がんの多発は原発事故とは無関係」と2019年6月7日朝日新聞論座でも多くの意見が掲載されました。 2019年6月29日 名郷直樹氏、 7月7日 菊池誠氏の記事と立て続けに論座に記事が載りました。

  国連科学委員会(UNSCEAR)はそもそも、科学者の集まりでも何でもなく、国家の代表者で構成されています。1956年第1回会議でアメリカ代表団を率いたのはシールズ・ウォーレンであり、彼は原爆開発のマンハッタン計画の中心人物であり、米国原子力委員会(AEC)元生物医学部長でした。プルトニウム人体実験の人体実験の関係者でもあります。他のメンバーのオースティン・ブルーズとメリル・アイゼンバットも すべて米国原子力委員会(AEC) のメンバーでした。アメリカを代表する遺伝学者ハーマン・マラーなど、遺伝学者は代表団から排除されました。 国連科学委員会(UNSCEAR) の各国の代表はみな原子力委員会関係のメンバーでした。1956年当時は、ソ連、チェコスロバキアの代表は核実験のフォールアウトによる人間への健康被害を訴え、核実験禁止を会議で主張していました。しかし、アメリカ、イギリス、カナダなどが反対し、核実験即時停止は少数意見として葬りさられました。日本の 国連科学委員会( UNSCEAR)の代表、都築正男、田島英三らも核実験の即時停止に反対しました。これが 国連科学委員会( UNSCEAR) の実態です。

 2013年 国連科学委員会( UNSCEAR) は福島でがんは増えない、という報告書を出しました。線量が低すぎる、というのです。被害の事実を見ず、「自分たちで作り上げた科学に基づくとがんは出ないはずだ」という議論をしています。

25歳時検診は甲状腺がん2人/受診者3161人の異常な発症率 資料

 新聞各紙は、福島県の甲状腺評価部会の発表をただ垂れ流しているだけです。しかし、事実はこうです。原発事故当時、もっともヨウ素131を始めさまざまな短寿命核種が空気の中を舞い散り、雨となって落ちてきた2011年3月16日、福島県は県立高校の合格発表を強行しました。良心的な教員たちは、外部被ばく・内部被ばくの影響を恐れ、合格発表の延期を求めましたが、無視されました。

 この日、中通りでも雨が降ったと言います。2019年1月21日の東京新聞の報道によれば、この時、中学3年生で高校の合格発表と手続きのため、1日外にいて雨にも打たれた女性が4年後甲状腺がんを発症しています。

福島甲状腺がん 背信の果て(1)(上) 線量測定わずか1080人   2019年1月21日 東京新聞 朝刊28面

 福島県民健康調査検討委員会では、福島県の小児甲状腺がんの発症のピークが14歳前後であり、チェルノブイリ原発事故後の小児甲状腺がんの患者の6割が0~6歳であることを引き合いに出して、「チェルノブイリ原発事故後の小児甲状腺がんの発症年齢と福島とは違う。だから、福島の小児甲状腺がんは原発事故の放射線の影響ではない」と主張してきました。しかし、この1巡目検査(先行検査と呼ばれています)の患者の平均年齢は14.9歳。原発事故当時、中学3年生だった子どもたちです。

先行検査で細胞診等で悪性ないし悪性疑いであった116人の年齢、性分布 2017年6月5日

 この原発事故当時、中学3年生だった世代がもっとも甲状腺がん発症のリスクがあるのではないでしょうか?チェルノブイリ原発事故の当時は、ソ連政府が原発事故があったことを隠し、市民は1週間たってもチェルノブイリで原発事故があったことを知りませんでした。首都ミンスクの医師でさえ、そう証言しています。小さな子どもたちも何も知らず外で遊び、牛乳を飲んでいました。しかし、日本では福島中央テレビが1号機の爆発を2011年3月12日同日、約1時間40分後には爆発の映像を報道しています。日本では、チェルノブイリ原発事故で小さな子どもが甲状腺がんに罹ったことを調べた保護者の方々は小さい子どもを外で遊ばせず、牛乳を飲ませなかったのではないでしょうか。一方、合格発表で外に出ていて、合格手続きで外に並んだ中学3年生は、無防備のまま、大量の内部被ばくをしたのではないでしょうか?

 また、木村真三氏は、第8回東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議 (2013年7月16日)で以下のように、中学生、高校生の部活動による内部被ばくの危険性を指摘しています。

意見
上記の福島県内の旧警戒区域等以外は、避難指示が出ておらず、指示系統の混乱から、小中学校以下の子ども達と異なり、長時間外活動(部活動)を続けてた高校生や18歳未満の建設作業員などへの状況調査を進める必要がある。

第8回東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議 (2013年7月16日) 木村真三氏提出資料より

 ですから、原発事故当時、中学3年生だったり、中学・高校生で部活動をやっていた世代を緊急に甲状腺検査を行う必要があります。原発事故から5年後には、福島県は、この原発事故当時中学3年生だった世代が20歳になろうとするときに、「対象者 が 20 歳を超えるまでは 2年ごと、それ以降は 25 歳、 30 歳等の 5年ごと の節目健診により 、長期にわたり 検査を実施 する」と「節目検査」の名称で検査を5年置きにしてしまいました。まさに、もっとも甲状腺がんのリスクが高い世代の検査間隔を2年置きから5年置きに引き伸ばしたのです。

 2020東京パラリンピック、オリンピック前に、福島の甲状腺がんの更なる多発を隠すための隠蔽工作と言えます。

 昨日2020年1月20日に行われた第14回 甲状腺評価部会では、初めてこの25歳時での「節目検査」の結果が公表されました。

資料3-2 県民健康調査「甲状腺検査【25歳時の節目の検査】」実施状況

 これによれば、25歳、26歳で甲状腺検査を受けたのは、対象者4万4542人のうちの7.1%、たった3161人です。しかし、この1次検査を受けた3161人から2人の甲状腺がんの患者が見つかっています。不思議なことに、この検査結果は2019年3月31日現在。なぜ、ほぼ1年前の結果しか公表しないのでしょうか?この結果、よく見ると、2cm以上の嚢胞があったり、5mm以上の結節があった105人が2次検査に回っていますが、うち83人しか2次検査を受けていません。2次検査で穿刺細胞診を受けなければ甲状腺がんかどうかは分かりません。22人はなぜ2次検査を受けていないのでしょうか?意図的、計画的に2次検査が遅らされているのではないか?と疑われます。この22人の2次検査結果が公表されるのは、 2020東京パラリンピック、オリンピック が終わった後なのでしょうか?

第14回県民健康調査検討委員会 甲状腺評価部会 県民健康調査「甲状腺検【25歳時の節目検査】」 2020年1月20日

 甲状腺がんを発症するのは10万人あたり2人か3人と言われます。それが全員検査することで数倍の割合で見つかることもある、と言われます(スクリーニング効果と呼ばれています)。かりに10倍見つかったとしても、10万人あたり20人か30人です。この「25歳の節目検査」での3161人あたり2人の発症割合は10万人あたりになおすと63人です。スクリーニング効果を主張する人々の想定の2~3倍の人数です。

 しかし、105人のうち22人も2次検査を終えていない、ということは、21%が2次検査を受けていないことになります。すなわち、1次検査は3161人受けていても、そのうち1次検査、2次検査を終了しているのは21%を除く79%になります。つまり、受診者は3161人の79%ということになります。3161人→2479人に。2479人あたり2人の甲状腺がんの患者、これを10万人あたりに直すと、80.6人になります。 スクリーニング効果を主張する人々の想定の2.6~4倍の人数です。 もはや、スクリーニング効果では説明がつきません。

 一刻の猶予もなりません。原発事故当時中学3年生だったり、中学・高校生だった世代の全員の甲状腺検査を実施するべきです。「節目検査」などという欺瞞工作は中止し、1年おきの検査にするべきです。

 原発事故の放射能誘発の小児甲状腺がんは、通常の大人の甲状腺がんとは異なり、悪性でリンパ節への転移が多く見られます。肺転移した場合に、命を失う危険性もあります。原発事故の放射線が原因かどうか、などという議論はやめて、多発している小児甲状腺がんの患者に向き合うべきです。また、甲状腺を摘出した場合に、その後の生活に様々な支障をきたします。生涯にわたる補償を国と東京電力は行うべきです。

 福島民友、福島民報新聞の記者の方々に訴えます。情報をただ流すのではなく、批判的に情報を検討して欲しい。チェルノブイリ原発事故後にいかに人々が苦しんでいるのかを、原発推進側の科学者の言葉ではなく、苦しんでいる市民の立場に立って奮闘している医師、ボランティアの方々の言葉から聞き取って欲しい。チェルノブイリ原発事故の被害は日本には正しく伝わっていません。東京新聞のように、放射線医学総合研究所に眠っているデータを情報公開請求で明らかにし、福島県民の立場に立った報道をして欲しい、です。

がん登録情報活用 県民健康調査検討委 甲状腺検査評価部会 受診率低下で 2020年1月20日 福島民報 2面
全国がん登録活用へ 県部会 甲状腺検査の受診率低下 2020年1月20日 福島民友 2面
甲状腺検査の受診率が低下 県評価部会 2020年1月21日 朝日新聞 福島県版17面
データ解析向上へ がん患者DBと連携 甲状腺検査 2020年1月21日 読売新聞 福島県版29面
甲状腺評価部会 新体制で初開催 2020年1月21日 毎日新聞 福島県版19面

伊方原発3号機運転差し止め仮処分決定2020年1月17日「妨害予防請求権」で原発の運転は止められるー広島高裁

 2020年1月17日、山口県の伊方原発から30~40キロ圏内の島しょ部に住む住民3名が起こした伊方原発運転差し止め即時抗告審で、広島高裁 森一岳、鈴木雄輔、沖本尚規裁判官は、伊方原発3号機の運転差し止めを命じる決定を出しました。

 この決定文で、 「福島事故のような過酷事故は絶対起こさない」という理念や「妨害排除請求権」と「妨害予防請求権」について書かれています。多くの新聞はこのことを書きません。東京新聞が唯一、「森裁判長は、原発の危険性検証には『福島事故のような過酷事故は絶対起こさないという理念にのっとった解釈が必要なことは否定できない』と言及」と報道しています。東京新聞2020年1月18日1面。朝日新聞、毎日新聞、読売新聞はこの理念については一切言及していません。

 またこの決定文には、原発が運転中に事故を起こした場合、 「大量の放射性物質を外部に放出することになり」、 「人が放射線を短時間で一度に受けると、多数の細胞が死に、組織や臓器の働きが悪くなることに加え、自らの生命を維持するためのDNAや、細胞を修復する能力が失われてしまう可能性があるから、生命、身体に対する影響は重大で、かつ、不可逆的なもの」と述べた上で、「 住民らは、このような重大な被害を受ける具体的な危険性が認められるときには、発電用原子炉施設の運転を、人格権に基づく妨害予防請求として差止めを求めることができる。 」と述べています。この「人格権に基づく妨害予防請求権」という権利をこの判決では掲げて、伊方原発3号機の運転差し止めを求めているのに、東京新聞を含めて、どの新聞も書いていません。

 こと、原発再稼働差し止め、原発建設差し止めの判決の際には、新聞記事を読みあさるのではなく、まず、判決文全文を読むことをお勧めします。新聞には大事なことをわざと書かないバイアスがかかっているからです。

 ちなみに、川内原発運転を止めるため、原子力規制委員会の火山リスクの検討が不十分だとして、同委員会の新基準適合を取り消しを求めた裁判の判決文では、以下のような論拠で原告の低線量被ばくを回避したいという訴えを退け、年間20ミリシーベルトまでの被ばくを容認しています。

「放射線と他の発がん要因等のリスクとを比較すると、喫煙は1000ないし2000ミリシーベルト、肥満は200ないし500ミリシーベルト、野菜不足や受動喫煙は100ミリシーベルトから200ミリシーベルトのリスクと同等とされ、年間20ミリシーベルトを被ばくすると仮定した場合の健康リスクは、他の発がんと比べても低い。」川内原発設置変更許可取り消し裁判判決全文 2019年6月17日 pp.83

川内原発設置変更許可取り消し裁判判決全文 2019年6月17日

 今回の伊方3号機の運転差し止め仮処分却下決定の即時抗告の決定文には、このようなでたらめな放射線防護理論はありません。「人格権」と、人格権を侵害する場合には「妨害排除請求権」が、人格権を侵害する恐れがある場合には「妨害予防請求権」がある、とはっきり書いています。 伊方原発3号機運転差し止め仮処分命令申立却下決定に対する即時抗告事件 決定 2020年1月17日  pp.6~7

伊方原発3号機運転差し止め仮処分命令申立却下決定に対する即時抗告事件 決定 2020年1月17日 広島高裁 裁判官 森一岳 鈴木雄輔 沖本尚規

 是非、決定文、全文を読むことをお勧めします。そして、この人格権と「妨害予防請求権」について、学習を深めると同時に、「喫煙、肥満、野菜不足や受動喫煙うんぬん」のような判決を許さない運動が必要です。

 以下、決定文より大切だと思われる文章を抜き書きしました。編集者が読みやすさを考え、長文をいくかに分割し、「本件」「上記のような」の言葉を省略しました。決定文そのものではありません。

「福島事故のような過酷事故は絶対起こさない」という理念

 抗告人らの主張のうち、発電用原子炉施設について、福島事故のような過酷事故は絶対起こさないという意味での高度な安全性を要求すべきであるという理念については、傾聴に値するものがある。PP.10

「妨害排除請求権」と「妨害予防請求権」

 本件は、抗告人らが、原子炉の運転によりその生命、身体等に対する侵害が生ずる具体的危険性があるとして、人格権にもとづいて原子炉の運転の差し止めを命ずる仮処分命令を求める事案である。抗告人らが主張する被保全権利は人格権に基づく妨害予防請求権としての差止請求権である。人の命、身体は言うまでものなく重大な保護法益である。また、これまで居住してきた生活環境の中でその生活を維持していき、その意思によらずにその生活環境を一方的に奪われないことも、人が個人として生きていくための基礎であって、重大な保護法益であるというべきである。人の生命、身体、生活の保護法益に係る権利は、人格権として、物件の場合と同様に排他性を有するものと解される。したがって、人は、人格権が違法に侵害され、又は違法に侵害されるおそれがある場合には、現に行われている違法な侵害行為を排除し(妨害排除請求)、又は将来生ずべき違法な侵害行為を予防する(妨害予防請求)ため、人格権に基づいて侵害行為の差止めを求めることができる、と解するのが相当である。PP.6

発電用原子炉の運転差し止めを「妨害予防請求権」で求めることができる

 発電用原子炉は、核分裂によって生じるエネルギーを利用して発電を行うため、運転に伴って必然的に放射性物質を発生するものである。発電用原子炉施設においては、原子炉を「止める」「冷やす」、放射性物質を「閉じ込める」という安全上の重要な機能を有する設備を用いて事故防止に係る安全確保対策を講ずることにより、異常発生時においても放射性物質を発電用原子炉施設内に閉じ込め、放射性物質を環境へ大量に放出する事態を防止することが予定されている。が、安全確保対策の失敗により、原子炉の停止又は冷却ができず、かつ、放射性物質の閉じ込めにも失敗した場合には、大量の放射性物質を外部に放出することになる。また、人が放射線を短時間で一度に受けると、多数の細胞が死に、組織や臓器の働きが悪くなることに加え、自らの生命を維持するためのDNAや、細胞を修復する能力が失われてしまう可能性があるから、生命、身体に対する影響は重大で、かつ、不可逆的なものである。大量の放射性物質が外部に放出された福島事故においては、政府の避難指示によって避難した住民が約15万人に達し、事故から約4年3ヵ月が経過した時点でも福島県全体の避難者は約11万2000人に及んでいる。この経験に照らしても、このような事故が起これば周辺の環境を放射能によって汚染されるなど、地域住民の生活基盤が破壊され、その回復には多くの困難が伴うことは明らかである。したがって、発電用原子炉施設の安全性に欠けるところがあり、その運転によって放射性物質が周辺の環境へ大量に放出される事態が発生すると、その周辺に住む住民らの生命、身体や生活基盤に回復し難い重大な影響を及ぼす恐れがあるから、住民らは、このような重大な被害を受ける具体的な危険性が認められるときには、発電用原子炉施設の運転を、人格権に基づく妨害予防請求として差止めを求めることができる。PP.6~7

 決定文で重要視された、伊方原発目の前(2km)にある活断層の問題 関連資料
中央構造線断層帯(金剛山地東縁-由布院)の長期評価(第二版) 2017年12月19日 地震調査研究推進本部地震調査委員会

弁護団声明 広島高裁による原発運転差止決定(勝訴決定)を受けて 2020年1月17日 伊方原発運転差止山口裁判弁護団

伊方原発 運転再び認めず 「地震、火山の想定不十分」 3号機 広島高裁 仮処分決定 2020年1月18日 東京新聞 朝刊1面
伊方原発運転差し止め 活断層の評価不十分 広島高裁仮処分 火山灰想定も過小 2020年1月18日 朝日新聞 朝刊1面
伊方原発 再び差止め 活断層・火山 評価不十分 広島高裁 4月運転再開難しく 2020年1月18日 毎日新聞 朝刊1面
伊方原発 運転差し止め 3号機 広島高裁、仮処分決定 2020年1月18日 読売新聞 朝刊1面

年間1ミリシーベルトは「突然死」のレベル。ICRPの一般人の許容線量、年間1ミリシーベルトを法制化させてはならない。

 時々、日本の法令では一般人の年間被ばく線量の上限は「年間1ミリシーベルト」と言われます。しかし、日本の法令では、一般人の年間被ばく線量の上限は定められていません。「一般人年間1ミリシーベルト」は、国際放射線防護委員会(ICRP)が提言しているだけであり(ICRP pub )

スウェーデンでセシウム137 10万ベクレル/m2の地域でガン発生率が11%増えた マーチン・トンデル論文

[初稿]2012年2月2日

スウェーデンの放射能汚染地域でガンが増加

 チェルノブイリから 1800km離れたスウェーデン北西部は、事故2日後の 4 月 28 日から 29 日にかけて降った雨のよって、かなりの放射能で汚染された。被災3カ国の法令に従えば「汚染地域」と指定される、3.7万ベクレル/m2 以上のセシウム 137 汚染面積は 2 万 3000 平方 km に達した。リンコピング大学のトンデルらのグループは、チェルノブイリからの放射能によって、スウェーデンの汚染地域でガンが増加するかどうかを調べてみようという疫学研究を企画した。スウェーデンには、そのような疫学調査に取り組むための基本的な条件が整っていた。すなわち、詳細な汚染測定データ、正確な住民登録、それに確かなガン診断登録制度である。

 トンデルらはまず、スウェーデンの中北部で汚染を受けた7つの州を調査対象に選び、スウェーデン放射線防護局が作成したセシウム 137 汚染地図を用いて、行政の最小単位である「地区」を6つの汚染レベルに区分した(図 12)。次に、7州の住民登録を基に、1986 年に 60 歳以下であって、1985年 12 月 31 日と 1987 年 12 月 31 日に同一住所に登録されていた住民すべてを対象集団として選び出した。その結果、性別、年齢、先行する2年間の居住地に関する情報を備えた、114 万3182 人の調査対象集団が得られた。スウェーデン・ガン登録データを基に、1988 年から 1996 年の9年間に調査集団で発生したガンを調べると、全部で2万 2409 件のガン発生が見つかった。

 汚染レベルとガン発生率との関係をプロットしてみると、汚染レベルともに統計的に有意なガン増加が認められた(図 13)。ガン発生の過剰相対リスク(図の直線の傾きに対応)は、セシウム 137 汚染 10万ベクレル/m2 当り 0.11(95%信頼区間:0.03-0.20)であった。ガン増加の原因が放射能汚染であったとすると、観察されたガンのうち 849 件がチェルノブイリからの汚染によるものと見積もられている。

 トンデルらの論文では被曝量は評価していないが、今中の大ざっぱな見積もりでは、10万ベクレル/m2 のセシウム 137 汚染があったとして、はじめの2年間で受ける被曝量は 10~20ミリシーベルト 程度であろう。10万ベクレル/m2 当り 0.11という過剰相対リスクを シーベルト 当りに変換すると、1シーベルト 当り 5~10 の過剰相対リスクになる。広島・長崎被爆生存者の追跡調査データでは1シーベルト当り約 0.5 なので、トンデルらはその 10~20倍のリスクを観察したことになる。この違いについてトンデルは、10ミリシーベルト といった低レベル被曝では被曝量・効果関係が直線ではなく、極低レベルで効果が大きくなるモデルで説明しようとしている。

図表の単位は川根がkBq/m2をベクレル/m2に直しました。スウェーデンの地名も日本語表記にしました。あとは、今中哲二論文からの引用です。

スウェーデンのセシウム137による地表汚染 マーチン・トンデル 
スウェーデン汚染地域でのセシウム汚染レベルとガン発生率 1988年~19996年 マーチン・トンデル

内部被ばく1ミリシーベルトとは、放射性セシウム合計で大人3万9000ベクレル。1~3歳児は7500ベクレル。

  福島県が内部被ばく検査(WBC)の結果を累積で公表しています。

それを大人,13~18歳,8~13歳,3~8歳,1~3歳は、放射性セシウムどれくらいで年間1ミリシーベルトになるのか聞いた答え。外部被ばくは聞いてません。放射性セシウム合計で言うと順番に48000ベクレル,39000,23700,14600,7500ベクレル

自作ドライアイス霧箱で放射線を見る 応用編(1)さいたま市落ち葉からアルファ線

 文部科学省の「放射線の副読本」は放射線の安全性しか語りません。原発事故が生み出した「死の灰」が白血病やがんを引き起こすことも語りません。また、「霧箱」を使った天然の放射性鉱物を使った目で放射線(アルファ線)を見る実験だけは理科教育の中で行われていて、「自然にも放射線はあるのだ」という事だけが子どもたちの頭に刷り込まれています。
 果たして、東京や埼玉などの関東圏は安全な空間なのでしょうか?東京オリンピック、パラリンピックを開催してもいい環境なのでしょうか?
 霧箱を自作し、天然の放射性鉱物の出す放射線を目で見る実験をした後、岐阜県関市の落ち葉(2020年1月10日採取)と、埼玉県さいたま市の落ち葉(2012年5月採取)を「霧箱」に入れて観察しました。 岐阜県関市の落ち葉からは放射線が出ているようすを観察することはできませんでしたが、埼玉県さいたま市の落ち葉 の落ち葉からは放射線(恐らくアルファ線)が出ているようすがはっきりと観察されました。採取場所は、さいたま市浦和区仲町4丁目、さいたま市役所前の民家の道路です。
 この 埼玉県さいたま市の落ち葉(2012年5月採取) はベラルーシ製のNaIシンチレーション式放射能測定器AT1320Aで15分間測定したところ、放射性セシウム 5170ベクレル/kgが検出されたものです。 

[You Tube動画解説]
月1回、埼玉県さいたま市の理科室で小学校&中学校理科実践講座をやっています。2020年1月13日はさいたま市立A中学校第3理科室にて、「放射能からからだを守る」放射能防護の理科の授業に取り組みました。使用したのは①ヤガミ ペルチェ素子霧箱②自作ドライアイス霧箱です。使用した放射線源は、ペルチェ素子霧箱に附属していた天然トリウム鉱物砂礫。および放射能鉱物標本の、燐灰ウラン石、北投石、サマルスキー石。さらに、岐阜県関市の落ち葉とさいたま市落ち葉(2012年5月さいたま市役所前民家の前の道路で採取)です。 この動画は2020年1月13日さいたま市立A中学校第3理科室で19時22分~19時26分にかけて撮影したものです。撮影者は元さいたま市立中学校、理科教員、川根眞也です。

自作ドライアイス霧箱で放射線を見る 応用編(1)さいたま市落ち葉からアルファ線

さいたま市落ち葉 2012年5月採取 5170ベクレル/kg 2012年5月16日 NaIシンチレーション式測定器 AT1320A 15分測定

双葉町の避難指示解除 日程調整 2019年12月20日 10時11分 NHK 福島放送局

原発事故があった町の避難指示解除が、こんな小さな記事になることが信じられない。いかに大新聞が原発事故の健康被害を軽視しているか、が分かる。政府によるメディアコントロールが完成している、というべきか?テレビ新聞の情報を鵜呑みにしていたら、真実は何も分からない。情報は自ら取りに行くしかない。

双葉など3町、一部避難指示解除へ 2019年12月21日毎日新聞 中部本社版 24面 新聞各紙の報道
双葉町の避難指示解除 日程調整 2019年12月20日 福島 NEWS WEB

[記事]
双葉町の避難指示解除 日程調整
2019年12月20日 10時11分 NHK 福島放送局

東京電力福島第一原発が立地する双葉町が、町の北東部などの避難指示を来年3月4日に解除する方向で国や福島県と調整を進めていることが関係者への取材でわかりました。
双葉町は原発事故による避難指示が唯一、全域で続いていて、これが初めての解除となります。

双葉町で避難指示の解除が予定されているのは、町の北東部の「避難指示解除準備区域」と、JR常磐線の双葉駅周辺、これらの地域をつなぐ町道です。
町はこの地域での放射線量が十分下がっているとする専門家による町の検証委員会の報告などを受けて、避難指示の解除について国や県と協議を行っています。
関係者によりますと、解除の日程を来年3月4日にする方向で調整が進められ、今月26日に国と県、町の最終的な協議が行われるということです。
3月14日にはJR常磐線の双葉駅を含む区間で運転再開が検討されているほか、3月上旬には常磐自動車道の常磐双葉インターチェンジが開通する予定だということです。
双葉町は原発事故による避難指示が唯一、全域で続いていて、これが初めての解除となります。
また、今回の解除により、原発事故の1年後から放射線量に応じて県内11の市町村で設定された3つの避難指示区域のうち、帰還困難区域以外の区域はすべてなくなることになります。

[解説]
大新聞がいかに、原発事故の町の避難指示解除を報じたか、まとめました。

1月例会のお知らせ 2020年1月12日(日) 13:30 埼玉県さいたま市 浦和

1月例会のお知らせです。

※ 偶数月に埼玉県さいたま市で開催しています。昨年2019年12月は都合により、本年1月に例会を延期しました。

日 時 1月12日(日) 13:30〜16:30(17:00まで延長の可能性あり)
場 所 浦和コミュニティセンター 南ラウンジBC (浦和パルコ9階)
参加費 会員の方300円
    一般参加の方600円
    高校生以下は無料

<テーマ>

1.『プルトニウム・ファイル』(アイリーン・ウェルサム,翔泳社,2000年)を読む

アメリカには20万人を超える被ばく者がいた  報告:川根 眞也

アイリーン・ウェルサム『プルトニウム・ファイル・上』翔泳社 2000年
アイリーン・ウェルサム『プルトニウム・ファイル・下』翔泳社 2000年
劣化ウラン研究会『放射能兵器 劣化ウラン 核の戦場 ウラン汚染地帯』技術と人間社 2003年

<休憩> 14:50~15:05(予定) 

2.内部被ばくに関する最新情報 報告:川根 眞也

  ・原発立地自治体、双葉町の避難指示解除2020年3月4日か?

   ・日本の食品の放射能汚染の実態 

   ・大阪湾でトリチウム汚染水放出を狙う、大阪維新の会  報告:川根眞也     

3.会員のみなさんからの意見交流会 ※ この部分はツィキャスしません。

※ 懇親会もあります。お時間のある方はどうぞ。

※ 諸事情によりプログラムが変更になる場合があります。 ※ 当日はツイキャス中継もしますので、会場に来れない方は是非、視聴参加ください。 http://twitcasting.tv/naibuhibakushim/show/ こちらでは、生中継の他、過去の動画を見ることも出来ます。 聞き逃した情報などもチェックしてみてください。 それでは、沢山のご参加をお待ちしています。  

【お問い合わせ】entry.naibu@gmail.com 内部被ばくを考える市民研究会事務局

内部被ばくを考える市民研究会

東電福島第一原発のある、双葉町を2020年3月4日に避難指示解除。各紙はどのように報じたか?

東電福島第一原発のある、双葉町を今年2020年3月4日に避難指示解除する、という。読売は2019年12月20日東京本社版には書いたが、大阪、西部、北海道、中部本社版は記事を飛ばした。朝日は東京、名古屋では3段の記事だが大阪、名古屋では1段。毎日新聞は東京、北海道本社版ではカラーの地図付きで記事を書いたが、大阪版は白黒の地図、西部、中部はベタ記事だ。こうして大新聞により原発事故は忘れ去られ、東京オリンピックに突き進む。

写真1 福島民友 2019年12月20日1面 ツィッター八木明々さんより
写真2 東京新聞 2019年12月20日6面
写真3 読売新聞 東京本社版 2019年12月20日30面
読売新聞 大阪本社・西部本社・北海道本社・中部本社版には記事なし
写真4 朝日新聞 東京本社 2019年12月20日35面
写真5 朝日新聞 大阪本社 2019年12月20日29面
写真6 毎日新聞 東京本社 2019年12月21日28面
写真7 毎日新聞 大阪本社 2019年12月21日26面
写真8 毎日新聞 中部本社 2019年12月21日24面

写真1 福島民友 2019年12月20日1面 ツィッター八木明々さんより
写真2 東京新聞 2019年12月20日6面
写真3 読売新聞 東京本社版 2019年12月20日30面
読売新聞 大阪本社・西部本社・北海道本社・中部本社版には記事なし
写真4 朝日新聞 東京本社 2019年12月20日35面
写真5 朝日新聞 大阪本社 2019年12月20日29面
写真6 毎日新聞 東京本社 2019年12月21日28面
写真7 毎日新聞 大阪本社 2019年12月21日26面
写真8 毎日新聞 中部本社 2019年12月21日24面