日本では,大気汚染防止法により,大気環境は地方自治体が運用する常時監視測定局でモニタリングされています。モニタリングされている大気汚染物質は,二酸化硫黄(SO2),一酸化炭素(CO),浮遊粒子状物質(SPM),光化学オキシダント(Ox),二酸化窒素(NO 2),微小粒子状物質(PM2.5)などで,これらの 1 時間あたりの平均濃度が自動測定機により常に測定され,これらのデータは,速報値として環境省大気汚染物質広域監視システム(そらまめ君)の Web ページでリアルタイムに公表されています。
測定項目の一つである 浮遊粒子状物質(SPM) の質量濃度(μg m –3)は,測定局内の SPM 計により,一定流量で大気を 1 時間連続吸引し,粒径 10 μm 以下の粒子のみをテープ状のろ紙上に捕集し,その質量を自動測定することにより得られています。
2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災により起きた東京電力福島第一原子力発電所での原子炉事故により,原子炉内の大量の放射性物質が環境中に放出されました。大気中に放出された放射性物質は,大気の流れとともに,遠方にまで輸送され,その一部は,重力や降水などにより地表に沈着しました。土壌や植物などの放射性物質濃度の報告は多いが,原発事故当時の大気中放射性物質濃度は,複数の研究機関により限られた地点で連続的に測定されただけであり、空間放射線量は固定局のモニタリングポストや臨時的な可搬型モニタリングポストで測定されていたました。
震災や事故により混乱した状況のなかでも,前述した多くの常時監視測定局は原発事故当時も稼働しており,当時の浮遊粒子状物質(SPM) が SPM 計に搭載されたテープろ紙に捕集されていた.そこで,大浦泰嗣氏(首都大学東京大学院理学研究科化学専攻)らは東日本各地に設置されている SPM 計で使用されたこのテープろ紙をゲルマニウム(Ge)半導体検出器で分析することにより,原発事故当時の大気中放射性物質濃度を定量することを 2011 年秋に文部科学省と環境省に提案し、2014年に研究報告書が公表されています。
平成24年度SPM 捕集用ろ紙に付着した放射性核種分析報告書 首都大学東京 2013年3月 2014 年8 月データ訂正版

SPM 計は,一定流量(毎分 15 L,16.7 L,または 18 L.機器によって異なる.)で大気を数メートルの長さの吸気管を通して連続的に吸引し,分粒後,粒径が 10 μm 以下である SPM をテープろ紙(ガラス繊維(GF)製あるいはフッ素樹脂(PTFE)製)上に直径 11 mm または 16 mm の円状で捕集する.この SPM の質量を β 線吸収法により自動測定し,大気中 SPM 質量濃度(μg m –3)を算出します。テープろ紙に捕集された SPM は,Fig. 1 に示すように黒色あるいは褐色の円として観察され,これを SPM スポットと呼びます。1 時間ごとにテープは自動的に一定長巻き取られるため,Fig. 1(b)に示すように 1 時間捕集された円状のPM がろ紙上に連続的に並びます。ろ紙上には SPM スポットの捕集日時は記録されないため,まず,各 SPM スポットの捕集日時の同定を行った.同定の際,γ 線測定対象日におけるテープろ紙 1 周あたりに存在する SPM スポットの数を記録しました。その後,SPM スポットを一つずつ切り離し,γ線測定用の試料を作成しました(Fig. 2)。この試料中の放射性物質をゲルマニウム半導体検出器で測定し,濃度を定量しました。-以上「浮遊粒子状物質自動測定機で使用されたテープろ紙を利用する大気中放射性セシウムの定量 大浦泰嗣ほか」 2020年 分析化学
以下、東京都葛飾区の水元公園のデータを内部被ばくを考える市民研究会 川根眞也がデータをExcelに入力し、グラフ化したものです。2011年3月21日朝8時~11時に水元公園を訪れた人はこれほどの空気を吸っていたことになります。放射性セシウムで最大1時間あたり175ベクレル/m3の空気を吸っていたことになります。東京電力の原子力発電所内での使用基準に従えば、全面マスクを着用すべきレベルの半分の数値にあたいする空気の汚染であったことになります。


