昨日、2020年1月20日福島県県民健康調査検討委員会の第14回甲状腺評価部会が開かれました。今日2020年1月21日地元紙、福島民友、福島民報は2面で報道しました。しかし、全国紙、朝日、毎日、読売は1月21日朝刊全国版では一切、報道しませんでした。東京新聞も報道しませんでした。朝日、毎日、読売は何と、福島県版だけで報道しました。巻末に5紙の記事を掲載しました。
記事1 全国がん登録活用へ 県部会 甲状腺検査の受診率低下 2020年1月20日 福島民友 2面
記事2 がん登録情報活用 県民健康調査検討委 甲状腺検査評価部会 受診率低下で 2020年1月20日 福島民報 2面
記事3 データ解析向上へ がん患者DBと連携 甲状腺検査 2020年1月21日 読売新聞 福島県版29面
記事4 甲状腺検査の受診率が低下 県評価部会 2020年1月21日 朝日新聞 福島県版17面
記事5 甲状腺評価部会 新体制で初開催 2020年1月21日 毎日新聞 福島県版19面
こうして、原発事故が引き起こした小児甲状腺がんの問題は、福島限定になり、日本の人々から忘れ去られていく効果を持っています。心配しているのは、福島県民だけ、という構図を作り出しているのは、大手新聞社です。
市民メディアとして、our planet tvさんが甲状腺評価部会のライブ中継をしてくれています。our planet tvさん、ありがとうございます。
【ライブ配信】13:30〜甲状腺検査評価部会 our planet tv 2020年1月20日
福島民友、福島民報の記事はどちらとも、前回第13回甲状腺評価部会が「2巡目検査について、現時点で甲状腺がんと放射線被ばくとの関連は認められないとの中間報告をまとめ、上部組織の県民健康調査検討委員会はこれを了承した」と無批判に報道しています。これは、2019年6月3日の第13回甲状腺評価部会で「 2巡目検査について、現時点で甲状腺がんと放射線被ばくとの関連は認められない 」との中間報告まとめを出したましたが、原案はまったく議論されないまま、一方的に了承されたものでした。県民健康調査検討委員会のまとめた甲状腺がんの患者数には、他に11人の患者が漏れていて、この11人のデータを無視した中間報告でした。
委員、直前まで知らされず~被曝否定の根拠データ our planet tv 2019年6月28日
また、上部組織である県民健康調査検討委員会の第35回が2019年7月8日に開かれ、この中間報告が討議されました。その席上、中間報告が、 国連科学委員会(UNSCEAR)報告書の被ばく線量推計にまるごと依存して推論を立てていますが、この 国連科学委員会(UNSCEAR)報告書の被ばく線量推計 が不十分なのではないか、という指摘があり、この日7月8日には中間報告は了承されませんでした。しかし、星北斗座長預かり、という一方的なまとめを行って会は終了。そして、議論の経過が一切わからないまま、2019年7月末には福島県のホームページに「 部会まとめの報告を受け、所見に対して結論づけるのは早いのではないかとの意見もあったが、多くの委員の賛成のもと、検討委員会としては了承するものである」という一方的な「了承」という文書が掲載されました。
「福島県の子どもたちの小児甲状腺がんの多発は原発事故とは無関係」と2019年6月7日朝日新聞論座でも多くの意見が掲載されました。 2019年6月29日 名郷直樹氏、 7月7日 菊池誠氏の記事と立て続けに論座に記事が載りました。
国連科学委員会(UNSCEAR)はそもそも、科学者の集まりでも何でもなく、国家の代表者で構成されています。1956年第1回会議でアメリカ代表団を率いたのはシールズ・ウォーレンであり、彼は原爆開発のマンハッタン計画の中心人物であり、米国原子力委員会(AEC)元生物医学部長でした。プルトニウム人体実験の人体実験の関係者でもあります。他のメンバーのオースティン・ブルーズとメリル・アイゼンバットも すべて米国原子力委員会(AEC) のメンバーでした。アメリカを代表する遺伝学者ハーマン・マラーなど、遺伝学者は代表団から排除されました。 国連科学委員会(UNSCEAR) の各国の代表はみな原子力委員会関係のメンバーでした。1956年当時は、ソ連、チェコスロバキアの代表は核実験のフォールアウトによる人間への健康被害を訴え、核実験禁止を会議で主張していました。しかし、アメリカ、イギリス、カナダなどが反対し、核実験即時停止は少数意見として葬りさられました。日本の 国連科学委員会( UNSCEAR)の代表、都築正男、田島英三らも核実験の即時停止に反対しました。これが 国連科学委員会( UNSCEAR) の実態です。
2013年 国連科学委員会( UNSCEAR) は福島でがんは増えない、という報告書を出しました。線量が低すぎる、というのです。被害の事実を見ず、「自分たちで作り上げた科学に基づくとがんは出ないはずだ」という議論をしています。
25歳時検診は甲状腺がん2人/受診者3161人の異常な発症率 資料
新聞各紙は、福島県の甲状腺評価部会の発表をただ垂れ流しているだけです。しかし、事実はこうです。原発事故当時、もっともヨウ素131を始めさまざまな短寿命核種が空気の中を舞い散り、雨となって落ちてきた2011年3月16日、福島県は県立高校の合格発表を強行しました。良心的な教員たちは、外部被ばく・内部被ばくの影響を恐れ、合格発表の延期を求めましたが、無視されました。
この日、中通りでも雨が降ったと言います。2019年1月21日の東京新聞の報道によれば、この時、中学3年生で高校の合格発表と手続きのため、1日外にいて雨にも打たれた女性が4年後甲状腺がんを発症しています。
福島甲状腺がん 背信の果て(1)(上) 線量測定わずか1080人 2019年1月21日 東京新聞 朝刊28面
福島県民健康調査検討委員会では、福島県の小児甲状腺がんの発症のピークが14歳前後であり、チェルノブイリ原発事故後の小児甲状腺がんの患者の6割が0~6歳であることを引き合いに出して、「チェルノブイリ原発事故後の小児甲状腺がんの発症年齢と福島とは違う。だから、福島の小児甲状腺がんは原発事故の放射線の影響ではない」と主張してきました。しかし、この1巡目検査(先行検査と呼ばれています)の患者の平均年齢は14.9歳。原発事故当時、中学3年生だった子どもたちです。

この原発事故当時、中学3年生だった世代がもっとも甲状腺がん発症のリスクがあるのではないでしょうか?チェルノブイリ原発事故の当時は、ソ連政府が原発事故があったことを隠し、市民は1週間たってもチェルノブイリで原発事故があったことを知りませんでした。首都ミンスクの医師でさえ、そう証言しています。小さな子どもたちも何も知らず外で遊び、牛乳を飲んでいました。しかし、日本では福島中央テレビが1号機の爆発を2011年3月12日同日、約1時間40分後には爆発の映像を報道しています。日本では、チェルノブイリ原発事故で小さな子どもが甲状腺がんに罹ったことを調べた保護者の方々は小さい子どもを外で遊ばせず、牛乳を飲ませなかったのではないでしょうか。一方、合格発表で外に出ていて、合格手続きで外に並んだ中学3年生は、無防備のまま、大量の内部被ばくをしたのではないでしょうか?
また、木村真三氏は、第8回東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議 (2013年7月16日)で以下のように、中学生、高校生の部活動による内部被ばくの危険性を指摘しています。
意見
上記の福島県内の旧警戒区域等以外は、避難指示が出ておらず、指示系統の混乱から、小中学校以下の子ども達と異なり、長時間外活動(部活動)を続けてた高校生や18歳未満の建設作業員などへの状況調査を進める必要がある。
第8回東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議 (2013年7月16日) 木村真三氏提出資料より
ですから、原発事故当時、中学3年生だったり、中学・高校生で部活動をやっていた世代を緊急に甲状腺検査を行う必要があります。原発事故から5年後には、福島県は、この原発事故当時中学3年生だった世代が20歳になろうとするときに、「対象者 が 20 歳を超えるまでは 2年ごと、それ以降は 25 歳、 30 歳等の 5年ごと の節目健診により 、長期にわたり 検査を実施 する」と「節目検査」の名称で検査を5年置きにしてしまいました。まさに、もっとも甲状腺がんのリスクが高い世代の検査間隔を2年置きから5年置きに引き伸ばしたのです。
2020東京パラリンピック、オリンピック前に、福島の甲状腺がんの更なる多発を隠すための隠蔽工作と言えます。
昨日2020年1月20日に行われた第14回 甲状腺評価部会では、初めてこの25歳時での「節目検査」の結果が公表されました。
資料3-2 県民健康調査「甲状腺検査【25歳時の節目の検査】」実施状況
これによれば、25歳、26歳で甲状腺検査を受けたのは、対象者4万4542人のうちの7.1%、たった3161人です。しかし、この1次検査を受けた3161人から2人の甲状腺がんの患者が見つかっています。不思議なことに、この検査結果は2019年3月31日現在。なぜ、ほぼ1年前の結果しか公表しないのでしょうか?この結果、よく見ると、2cm以上の嚢胞があったり、5mm以上の結節があった105人が2次検査に回っていますが、うち83人しか2次検査を受けていません。2次検査で穿刺細胞診を受けなければ甲状腺がんかどうかは分かりません。22人はなぜ2次検査を受けていないのでしょうか?意図的、計画的に2次検査が遅らされているのではないか?と疑われます。この22人の2次検査結果が公表されるのは、 2020東京パラリンピック、オリンピック が終わった後なのでしょうか?

甲状腺がんを発症するのは10万人あたり2人か3人と言われます。それが全員検査することで数倍の割合で見つかることもある、と言われます(スクリーニング効果と呼ばれています)。かりに10倍見つかったとしても、10万人あたり20人か30人です。この「25歳の節目検査」での3161人あたり2人の発症割合は10万人あたりになおすと63人です。スクリーニング効果を主張する人々の想定の2~3倍の人数です。
しかし、105人のうち22人も2次検査を終えていない、ということは、21%が2次検査を受けていないことになります。すなわち、1次検査は3161人受けていても、そのうち1次検査、2次検査を終了しているのは21%を除く79%になります。つまり、受診者は3161人の79%ということになります。3161人→2479人に。2479人あたり2人の甲状腺がんの患者、これを10万人あたりに直すと、80.6人になります。 スクリーニング効果を主張する人々の想定の2.6~4倍の人数です。 もはや、スクリーニング効果では説明がつきません。
一刻の猶予もなりません。原発事故当時中学3年生だったり、中学・高校生だった世代の全員の甲状腺検査を実施するべきです。「節目検査」などという欺瞞工作は中止し、1年おきの検査にするべきです。
原発事故の放射能誘発の小児甲状腺がんは、通常の大人の甲状腺がんとは異なり、悪性でリンパ節への転移が多く見られます。肺転移した場合に、命を失う危険性もあります。原発事故の放射線が原因かどうか、などという議論はやめて、多発している小児甲状腺がんの患者に向き合うべきです。また、甲状腺を摘出した場合に、その後の生活に様々な支障をきたします。生涯にわたる補償を国と東京電力は行うべきです。
福島民友、福島民報新聞の記者の方々に訴えます。情報をただ流すのではなく、批判的に情報を検討して欲しい。チェルノブイリ原発事故後にいかに人々が苦しんでいるのかを、原発推進側の科学者の言葉ではなく、苦しんでいる市民の立場に立って奮闘している医師、ボランティアの方々の言葉から聞き取って欲しい。チェルノブイリ原発事故の被害は日本には正しく伝わっていません。東京新聞のように、放射線医学総合研究所に眠っているデータを情報公開請求で明らかにし、福島県民の立場に立った報道をして欲しい、です。




