東京第一原発事故と内部被ばくをめぐって 年間20ミリシーベルトまで福島住民帰還 第9回内部被ばくを考える市民研究会総会議案より (1) 2019年11月23日

東京第一原発事故と内部被ばくをめぐって

第9回総会 内部被ばくを考える市民研究会 2019年11月23日

<はじめに>

 東京電力福島第一原発事故から早8年半。政府、福島県、各自治体は、次々と原発20km圏内の避難指示解除を行い、今年2019年4月10日にはついに、福島第一原発の立地自治体である大熊町の38%の避難指示解除を行いました。

 大熊町の避難指示解除にあたって、「大熊町除染検証委員会」がおざなりに3回開かれましたが、ストロンチウム90とプルトニウム239+240の濃度がたった5箇所だけ公表されただけ。それで「安全」のお墨付きを与えた上で避難指示解除が行われました。しかし、避難指示解除から5ヵ月たった2019年9月1日に帰還した町民は、1万323人のうち84世帯94人だけです。これでどのように生活しろというのでしょうか?町がスラム化していくのが目に見えるようです。

<資料> あの頃のように暮らしたい 大熊町、避難指示の一部解除半年2019年10月7日 朝日新聞 夕刊 6面

 原発から放出されたのは、ヨウ素131、セシウム134,137だけでなく、ガンマ線を出さないためにその存在がすぐには分かりにくいストロンチウム90やプルトニウム239が放出され、大地に森林の木々に付着しています。除染は不可能です。チェルノブイリでは33年たった現在でも原発30km圏内には、住民の居住を認めていないのに、日本政府と福島県と各自治体は、原発の建っている町に住民を帰還させたのです。その帰還の基準は、ガンマ線だけで測った空間線量で、「年間20ミリシーベルト以下になることが確実になること」です。その空間線量率は3.8マイクロシーベルト/時以下、という内容。ここに人間を住まわせるということは、緩慢な殺人です。

<資料>避難指示解除の要件について 原子力災害対策本部 2011年12月26日

<資料>参考2 避難区域等の外の地域の学校等の校舎・校庭等の利用判断に係る暫定的考え方 文部科学省・厚生労働省 2011年4月19日

左資料を読むと、空間線量3.8マイクロシーベルト/時が年間20ミリシーベルトに被ばくに相当する、と政府が判断していることが分かります。

 そもそも政府が基準と定めている、年間20ミリシーベルトは空間線量率からから求めています。この政府の基準は正しいのか?年間20ミリシーベルトは健康を害する被ばく線量ではないのか?という基本的な批判が新聞、マスコミでは行われていません。ただただ、政府は国連科学委員会(UNSCEAR)などと一体となって、国際放射線防護委員会(ICRP)が「計画被ばく状況」「現存被ばく状況」「緊急被ばく状況」と決めた「現存被ばく状況」

<資料>被ばく状況と防護対策 環境省 環境省 放射線による健康影響 に基づいている「考え方」等に関する統一的な基礎資料 2015年10月          

を私たちに強制しています。

環境省は前ページの資料の解説にこう書いています。

国際放射線防護委員会(ICRP)は人の被ばく状況を、計画的に管理できる平常時(計画被ばく状況)、事故や核テロなどの非常事態(緊急時被ばく状況)、事故後の回復や復旧の時期など(現存被ばく状況)の3 つの状況に分けて、防護の基準を定めています。  平常時には、身体的障害を起こす可能性のある被ばくがないようにした上で、将来起こるかもしれないがんのリスクの増加もできるだけ低く抑えるように防護の対策を行うこととされています。そのため、放射線や放射性物質を扱う場所を管理をすることで、一般公衆の線量限度が年間1ミリシーベルト以下になるように定めています。また、放射線を扱う職業人には、5年間に100ミリシーベルトという線量限度が定められています。

 これを放射能による被ばくを拒否する私たちが読み替えるとこうなります。

国際放射線防護委員会(ICRP)は原発事故で放射能汚染されてしまった土地では、年間1ミリシーベルトは到底達成できないので、『現存被ばく状況』として、被ばくすることを市民に受け入れてもらうよう防護基準として年間1~20ミリシーベルトのうちの低い方を提案する。一般公衆の線量限度は年間1ミリシーベルト、職業人は5年間で100ミリシーベルトを線量限度とする。

 この国際放射線防護委員会(ICRP)の「ICRP Publication111 原子力事故または放射線緊急事態後の長期汚染地域に居住する人々の防護に対する委員会勧告の適用」は2008年10月に勧告されましたが、チェルノブイリ原発事故により、人々が年間1ミリシーベルトを超えて被ばくする状況が生まれたため考え出されたもので、事故(1986年4月26日)から実に22年もかけて勧告されたものです。遅すぎる勧告、そして、年間1ミリシーベルトを超える被ばくを強要する勧告である、と言えます。

 まず、この国際放射線防護委員会(ICRP)は、一般人の年間1ミリシーベルトが線量限度、と言いますが、年間1ミリシーベルトが安全な数値であるという証明はできていません。チェルノブイリ原発事故の際の乳児白血病では、ストロンチウム90による被ばくが0.067ミリシーベルトで白血病にかかる乳児が増えた事例があります。

<資料>チェルノブイリ原発事故 イギリス、ドイツ、ギリシャで0.067ミリシーベルトで乳児白血病が増えた 長山淳哉『胎児と乳児の内部被ばく』(緑風出版 2013年7月10日)

 「ミリシーベルト」という単純な概念で、人々の健康被害を語ることはできません。

 また、ロシア科学アカデミー客員で放射線生物学のアレクセイ・ヤブロコフ氏は、セシウム137で1キュリー/km2(3.7万ベクレル/m2,日本の放射線管理区域の4万ベクレル/m2に相当)の地域だけでなく、その10分の1のセシウム137で0.1キュリー/km2(3700ベクレル/m2の地域でも健康被害が出たと語りました。これは土壌に換算すると59.6ベクレル/kgの汚染にしかなりません。2012年12月14日 東京講演。

<参考>【追悼】アレクセイ・ヤブロコフ博士 日本の人々へのメッセージ「皆さんは真実のためにたたかわなくてはならない」 ブログ「風の谷」  再エネは原発体制を補完する新利権構造 2017年1月12日

 アレクセイ・ヤブロコフ氏が書いた『調査報告チェルノブイリ被害の全貌』(岩波書店,2013年4月26日)には、チェルノブイリ原発事故による人間の健康被害について、①総罹患率 ②老化 ③各種疾患 ④腫瘍性疾患 ⑤死亡率 で出典を示しながら研究成果の概略が書かれています。しかし、それはすべて、ミリシーベルトとの関係で書かれてはいません。土地のセシウム137の汚染度との関係で書かれています。土地が「高い」汚染、または「強度に」汚染されている、とはそれぞれセシウム137で18万5000ベクレル/m2以上、55万5000ベクレル/m2超えの汚染を指します。土地の汚染度が人間の外部被ばくの大きさを決め、また、汚染された土地の食べ物を食べることによる内部被ばくの大きさに関係するからです。しかし、国際放射線防護委員会(ICRP)はこの『調査報告チェルノブイリ被害の全貌』に収録されている、ロシア語、ウクライナ語、ベラルーシ語などのスラブ語で書かれた1000冊の文献および5000以上の印刷物およびインターネット上の出版物の1つたりとも採用していません。理由は簡単。彼ら国際放射線防護委員会(ICRP)が主張する、ミリシーベルトと健康被害との関係を記述した研究論文ではないからです。

土地の放射能(セシウム137,ストロンチウム90,プルトニウム239+240など)が、人々の健康を破壊しているのに、国際放射線防護委員会(ICRP)が決めたルールでミリシーベルトを計算し、健康被害とそのミリシーベルトとの関係で研究したものでないと、科学的でない、と学術論文として放射線防護の学会誌だけではなく、科学一般の学術誌からも却下されています。三田茂医師が「『新ヒバクシャ』に『能力減退症』が始まっている」を学術誌に掲載申請しても、リジェクトされています。健康被害とミリシーベルトとの関係についての言及がないからが理由です。

 アレクセイ・ヤブロコフ氏は先の講演で、「ミリシーベルトは測ることができない」とも語っています。例えば目の前に放射線を出す放射線物質があったとして、正面を向いている場合(内臓がよく被ばくする)とからだの側面を向けている場合(肋骨で内臓は守られているが肋骨がよく被ばくする)、背中を向けている場合(背骨と肋骨がよく被ばくし、内臓は守られている)と。内部被ばくについて、体内に入った放射性物質が代謝で排泄されるまでには個人差があり、ストロンチウム89の場合、生物学的半減期は

国際放射線防護委員会(ICRP)は70日間と主張していますが、個人によっては124日間である場合もある、と語っています。生物学的半減期は1000ベクレル体内に入ったとすると500ベクレルに半減するまでの時間ですから、70日間で1000ベクレル→500ベクレルに減少するのと、140日間かけてゆっくりと1000ベクレル→500ベクレルまで減少するのとでは、例えば骨髄に蓄積したストロンチウム89の場合は、骨髄の被ばく量がまったく異なってきます。

 外部被ばくも測れない、内部被ばくは個人差が大きく、どのくらい被ばくしたのか、評価できない、というのが正しいのです。

 しかし、土地の汚染がひどい所ほど症状が重く、また心筋梗塞や脳梗塞など様々な疾患やがん、白血病の発症率が高くなります。

ミリシーベルトは、放射能の出す放射縁の影響をまず、ガンマ線やX線、ベータ線は1倍、アルファ線は20倍、中性子はそのエネルギーによって2.5倍~20倍の範囲と、放射線の種類とエネルギーによって変える係数をかけて「等価線量」を出します。その放射能を「吸入(呼吸で吸い込む)」「経口摂取(食べ物として取り込む)」「経皮摂取(皮膚から吸収される)」ごとに、国際放射線防護委員会(ICRP)が決めた実効線量係数をかけて「預託実効線量」を計算します。

 欧州放射線リスク委員会は、ベータ線の影響を1倍とする係数は低すぎるので、5倍の係数をかける必要があることを主張しています。

 国際放射線防護委員会(ICRP)は1977年勧告でそれまでの「線量当量」という概念から、この「等価線量」や「実効線量」という概念を導入しています。しかし、この時に原発労働者の内部被ばくおよび白血病の発症で問題となる、ストロンチウム90の影響を著しく低く評価する係数に変えました。

<資料>中川保雄「<増補>放射線被曝の歴史ーアメリカ原爆開発から福島原発事故までー」明石書店,2011年

 ミリシーベルトは科学の上に成り立っている概念ではなく、国際放射線防護委員会(ICRP)によって核兵器開発と原発推進派のいいように数字をいじくられている政治的な産物です。

 年間20ミリシーベルトは健康に影響はない、という政府、福島県、各自治体の説明を批判的に検討するためには、そもそも、ミリシーベルトとはどんな概念なのか?私たちの放射能防護に役立っている理論なのか、を検討する必要はあります。 

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