福島第一原発事故後の甲状腺がん 原発事故当時高校の世代で甲状腺がんが多発しているのではないか?25歳時の節目検査をやめ、20歳以上は毎年の甲状腺検査をやるべき(その3)
2020年6月13日
内部被ばくを考える市民研究会 川根 眞也
(4)福島県民健康調査検討委員会が調べた甲状腺ガンを一次検査受診率、二次検査受診率で調整すると、高校生にピークがある。年齢が高くと甲状腺ガンを発症する割合が高くなることはない。
福島県民健康調査検討委員会や新聞テレビはさかんに、チェルノブイリ原発事故では、原発事故当時1~6歳の子どもたちが一番小児甲状腺ガンにかかった、と宣伝してきました。このため、あたかも、中学生、高校生、大学生になっても甲状腺ガンを発症していなければ、原発事故の放射能を吸っていても、甲状腺ガンを発症しないかのような幻想を与えてきました。その結果、18歳を超えると、甲状腺検査の受診率が極端に低くなりました。先行検査(2011、2012、2013年度)では、原発事故当時年齢で0~5歳、6~10歳、11~15歳、16~18歳の一次検査受診率は、3つの地域を合わせて、それぞれ85.7%、95.8%、83.19%、52.7%と高校卒業後の一次検査受診率が極端に低いです。また、二次検査の受診率がなぜが92.8%と100%ではありません。甲状腺に異常があるかもしれないのに、二次検査を受けていないのです。
つまり、県民健康調査検討委員会が発表している、甲状腺ガンの性別と年齢による分布図は実態とかけ離れたものです。特にそれは16~18歳の年齢層で大きな差があります。また、髙野徹氏が主張するように、年齢が上がるほど、甲状腺ガンの発症率があがるのではありません。
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表 福島県民健康調査検討委員会 小児甲状腺がん 先行検査(2011、2012、2013年度)悪性および悪性疑いの人数と受診率による調整
この一次検査受診率、二次検査受診率により、小甲状腺ガンの人数を調整すると、次ページのようなグラフになります。明らかに、高校生3年生、高校2年生の発症率が高いことが分かります。木村真三氏は政府の「第8回東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」で、長時間部活動を続けてきた高校生の内部被ばくについて調査するべきだ、と主張しています。
| 意見 福島県内の旧警戒区域等以外は、避難指示が出ておらず、指示系統の混乱から、小中学校以下の子ども達と異なり、長時間外活動(部活動)を続けてた高校生や18歳未満の建設作業員などへの状況調査を進める必要がある。 ―木村真三 第8回東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議 2013年7月16日 木村真三提出資料 |
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における小児甲状腺がん 悪性および悪性疑いの人数を一次検査受診率および二次検査受診率で調整した人数.jpg)
更に、ウクライナの放射線医学総合研究所のセルゲイ・クリメンコ教授は、高線量の被ばくをした0~4歳の子どもたちは15~18歳で甲状腺ガンを発症するが、低線量の被ばくをした0~4歳の子どもたちは20~24歳で甲状腺ガンを発症すると述べています。
<資料提供>食品と暮らしの安全 小若順一 2015年12月1日 キエフ

セルゲイ・クリメンコ教授作成資料 ウクライナ放射線医学研究所
<日本語訳>川根 眞也
それがまさに、この先行検査(2011、2012、2013年度)では、高校3年生や高校2年生がもっとも多く甲状腺ガンを発症していることと、そして、本格検査2回目(2014、2015年度)で高校1年生がもっとも多く甲状腺ガンを発症していることと一致するのではないでしょうか?
先行検査の追補版は2016年3月31日現在です。原発事故から4年経ち、高校3年生(当時17歳)は21歳に、高校2年生(当時16歳)は20歳になっています。まさに高い被ばくをした子どもたちが20歳になってから多く発症しているのではないでしょうか?
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本格検査2回目の追補版は2018年3月31日現在です。原発事故から6年経ち、高校1年生(当時15歳)が21歳になっています。これもまた、高い被ばくをした子どもたちが20歳になってから多く発症しているのではないでしょうか?
チェルノブイリ原発事故では、原発事故から1週間以上も市民に原発事故が起きたことは伝えられず、知らずに市民は子どもたちにヨウ素131で汚染された牛乳を飲ませていました。1986年5月1日のメーデーではデモにも出かけ、つりをしたり、日光浴をしたりしていました。
日本の福島第一原発事故では、1号機の爆発からおよそ1時間40分後には福島中央テレビは爆発のようすを報道していました。原発事故は小さな子どもを持つ親たちにはその日のうちに伝わっていたのです。問題は原発事故が起きたにもかかわらず、避難指示区域以外の高校では2011年3月16日高校の合格発表が行われたことです。当時の中学3年生は1日中屋外にいました。福島市などでは雨にも浴びたと言います。そして、中学、高校で部活動を屋外でやっていたこと。同じ町に住んでいたとしても、小学校入学前の幼児と、中学生、高校生の子どもでは、本来は幼児の甲状腺吸収線量が大きくなるにもかかわらず、中学生、高校生で部活動を屋外でやっていた子どもの甲状腺吸収線量が大きくなることがありえます。
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木村真三氏が2013年7月16日に、避難指示の出なかった地域における高校生の部活動による内部被ばくを指摘しているにも、かからず、福島県県民健康調査検討委員会は第12回2013年8月20日から第38回5月25日に至るまで、一度も、高校生の内部被ばくについて検討していません。
未だに「一次検査の結果での精密検査が必要となるB判定の割合や悪性ないし悪性疑いの発見率は、事故当時の年齢、二次検査時点の年齢が高い年齢層ほど高かった。これは、チェルノブイリ事故後に低い年齢層により甲状腺がんが多く発見されたものと異なっている。年齢の上昇に伴いがんが見つかることは、一般的ながんの発症と同様である。」(本格検査2回目結果に対する甲状腺評価部会まとめ)と述べています。チェルノブイリ原発事故後の小児甲状腺ガンの発症が多かった年齢と違うから、福島の子どもたちの甲状腺ガンは原発事故の放射能の影響ではない、と主張しています。
そもそも、チェルノブイリ原発事故と日本の原発事故では、もっとも被ばくした子どもたちの年齢層が違う、ということをあえて見ていない、としか考えられません。